アレッサンドロ・スカルラッティ

僕みたいに、小学校に上がる前から西洋音楽を叩きこまれていると、
「バロック音楽」と言うと、「古い音楽」という印象をどうしても拭いきれないままでいる。

その理由としては、やはりベートーヴェンという天才が傑出していて、
「ベートーヴェン以前」「ベートーヴェン以後」という捉え方をするようになってしまい、

「ベートーヴェン以前」のひとつの山場が、ハイドンやモーツァルトのロココであり、
バロックというと、それ以前の試行錯誤の時代、という見方をしてしまうせいでもある。

分かりやすくいえば、西洋音楽(クラシック音楽)の捉え方には、
進化論的感覚が根強く残っていて、

バロックの作曲家たちは、「その他大勢」の、
いわば「カンブリアモンスター」的な役回りなのである。

でも、絵画の世界では、それはない。

まぁ確かに、ベートーヴェンのような、芸術様式を一変させるレベルの、
決定的な天才がいない、という理由はあるものの、
少なくとも音楽の場合のような、進化論的な捉え方はされていない。

むしろ、ルネッサンス期のレオナルドやミケランジェロこそが、
その後のいかなる画家たちよりも優れている、という見方さえできる。

要するに僕が言いたいのは、
バッハ以外のバロック時代の作曲家たちが、不当に低い評価を受けている、ということ。

「低い評価」という言い方が適切でなければ、
「良さを理解されていない」と言い換えてもいい。

例えば、この、アレッサンドロ・スカルラッティのトッカータなんかは、どうだろう。

ロックミュージシャンが、このままエレキギターで弾いたとしても違和感のないぐらい、
モダンであり、スリリングであり、エキサイティングなのではないだろうか。

少なくとも、彼の他にも、ドミニコ・スカルラッティ、クープラン、ラモーといった同時代の作曲家たちは、
同レベルの曲を数多く書き残している。

思うに、バロック音楽というのは、
現代の音楽感覚に最も近く、そして最も豊かな音楽性が発揮された時代の音楽であって、

音楽愛好家たちは、バロック=古臭い、という固定概念を棄てて、
その素晴らしさにもっと目を向けるべきである。

(個人的には、バロック音楽は、テクノとの相性が抜群なのではと思っている。)