「心を操る寄生生物」(キャスリン・マコーリフ)

 

寄生という生き方は、
生物にとって最高の戦略ではなかろうか。

ウィルスや昆虫に限らず、人間でも同様で、
ニートにせよヒモにせよ、

生きるためのコストを最小限にできるというのは、
この上ない贅沢である。

寄生生物の話であれば今更珍しくもないが、
この本で紹介しているのは、

寄生生物が、己のホスト(宿主)の行動や思考を、
自分に都合の良いようにコントロールする、という話だ。

分かりやすい例でいえば、
最終ホストがネコである寄生生物がいたとして、
そいつがまずはネズミに寄生する。

そして、目的地であるネコに寄生するために、
自分が寄生したネズミの行動をコントロールし、
ネコに捕食されやすくする、という具合である。

前半はこのような例がたくさん出てきて、
生物の奥深さを知ると同時に、ちょっとゾッとさせられる。

後半はそれを人間にも敷衍し、
我々が抱く感情や、さらには宗教・文化までもが、
実は寄生生物と関係しているのではないだろうか、という話になる。

ペストやエイズの例を挙げるまでもなく、
感染性のある病気が、人間の行動に影響を及ぼしていることは事実であるが、
ただそれは、前半で紹介されているような「寄生」の例とは少し異なるように思うし、

またもし仮に、我々が体内に保有している細菌などが、
行動や思考をコントロールしていたとしても、
それを証明することはほぼ不可能に違いない。

なので、この本の後半については、
着眼点の面白さは評価したいけれども、
ちょっと飛躍しすぎかな、という感は否めない。