今月、あのスティーブン・ホーキングが、

「これまで想定されていたようなブラックホールは存在しない」

という新説を発表したようだ。

そもそもブラックホールというのは、アインシュタインの方程式を解いたときの「解」の1つであって、
決して観測で見つかったものではない。

そのような、存在が予測されるブラックホールというものに対して、
当のホーキングをはじめ、様々な学者がその姿に対する学説を発表し、
一部の性質は、X線望遠鏡などで、裏付けが行われるなど、
天文学の中では、常にホットな対象であった。

しかし、想定されていたブラックホールの性質には、
量子物理学的による説明が困難な部分があることが分かってきた。

現代物理学の、究極の目標のひとつに、
マクロを扱う相対性理論と、ミクロを扱う量子物理学の融合というものがある。

逆にいえば、この両者は、現時点では完全に親和するものではないわけで、
このブラックホールにおける矛盾というのも、まさにその1つといえるだろう。

ずばり、今回のホーキングの新説は、その矛盾を埋めるためのものだ。

つまり、ブラックホール自体の存在を否定するのではなく、
「矛盾をきたさない新しい形のブラックホール」の提案ということだ。

この説を非常に大雑把に説明すれば、
ブラックホールというのは、従来考えられていたようにすべての情報を吸い込んで破壊するのではなく、
吸い込んだ情報を変形して再放射している、ということ。

要するに、ブラックホールは巨大な計算機で、
インプットされた情報に、「とある関数」をかまして、アウトプットを行う。

ただし、その「関数」は誰にも分からず、
アウトプットされた情報から逆算して、インプットされた情報を復元することは不可能なのだという。

この説に従えば、従来ブラックホールに必要とされていた「ファイアウォール」という存在も必要がなくなり、
ある意味シンプルなモデルとなる。

しかしもちろん、反対する学者も多くいるし、
一番の問題は、この説が正しいのか間違えているのかを証明する手段が、
現状ではまったく存在しないことだろう。

もし新しいブラックホール理論が市民権を得れば、
これまでのSFの多くも、書き換える必要が出てくるかもしれない。