鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス(信長)

鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス(秀吉)

鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス(家康)

三武将の性格を表したものとして、日本人の人口に膾炙しているこれらの句であるが、
いま「耳嚢」(江戸時代の随筆集)を読んでいて、
若干違う形で載せられているのが気になった。

鳴かずんば 殺してしまえ ホトトギス(信長)

鳴かずとも 鳴かせて聞こう ホトトギス(秀吉)

信長と秀吉の句については、小異はあれど大差はない。

だが、家康の句だけは、随分と違っていた。

鳴かぬなら 鳴くとき聞こう ホトトギス(家康)

「鳴くまで待とう」という、完全に能動的な態度に対し、
「鳴くとき聞こう」というのは、一歩引いて客観性を保ちながらも、
虎視眈々と狙っているような、家康の「狸ぶり」がよくうかがえるのである。

自分はあまり、こちらの方面には詳しくはないのだけれども、
「鳴くまで待とう」よりも、「鳴くとき聞こう」の方が、
家康の性格を適確に表現している気がするのであるが、どうだろうか。

これは余談だが、「耳嚢」では、三武将の句を紹介したあとに、
連歌師の紹巴の句も載せている。

鳴かぬなら 鳴かぬのもよし ホトトギス

面白い句だとは思うのだけれども、
やはりあの三人だからこそ、なのだと思う。