「ルノワール -伝統と革新」(@国立新美術館)

「ルノワール -伝統と革新」(@国立新美術館)

草木が光合成に光を必要とするのと同様、印象派の画家にとって光は欠かせない要素です。

葉の色、水の色、土の色・・・それまでの既成概念を打ち破り、光による色の分解を試みました。

だから多くの印象派の興味が風景を描くことに向けられるのは自然な成り行きなのですが、
ルノワールの魅力は、その「印象派的色彩の解剖」を、人肌において行ったところにあるのではないでしょうか。

手のひらを見てみましょう。

それは単純な肌色でしょうか。
ところどころ赤い斑もあるし、青く浮き上がった血管もありますし、実に複雑な「色味」をしていることがわかるはずです。

こんなことは誰でも自分の手を見ればすぐにわかることなのですが、
意外なことに、画家たちはこれを表現してきませんでした。あるいは、表現する術を持たなかった、と書いた方が正しいかもしれません。

人肌の色こそは、まさに光の織りなす神秘の世界であり、それに果敢にもチャレンジし続けたのがルノワールという存在だったのではないでしょうか。
(それをさらに進めるとキュビズムになっていくわけですが、ここではそれに触れません。)

「水の中の裸婦」などはその典型で、細かく描き分けられた水の色―ここは他の印象派画家と変わりませんが―、そしてそれと同化するかのような、裸婦の微妙な肌の色・・・。

肌にまざった青は、血管でしょうか、それとも水の色でしょうか、あるいは夕暮れ時の最後に残された空の青い部分でしょうか、もしかしたらこの婦人の内面が色となって描き手には見えているのでしょうか。

正解はどれでもよいのです。

そのような想像をかき立てられることこそが絵を見る楽しみなのであり、
何よりここでは、人肌の色をここまで描き分けたルノワールの才能に感動できれば、それでよいのです。

当然ながら、ルノワールには裸婦を描いた作品が多くあります。

そこにはギリシャ・ローマ時代やルネサンスへの憧憬がある、と思うのは私の考えすぎでしょうか。

ルノワール

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