「大エルミタージュ美術館展」(@国立新美術館)

「大エルミタージュ美術館展」(@国立新美術館)

行こう、行こうと思いながら、結局開催終了前日。
しかも3連休の2日目、空は晴れ渡りすぎて、混まないはずはない、という日になってしまった。

ただ自分は、一から順に並んで鑑賞するタイプではないので、混んでいようといまいと、実はあまり関係がない。
それに、混雑の中に割り込んでいくというずうずうしさも、多少ながら備えている。
(それにしてもいつも思うのだが、絵を離れて見ている人たちは、一体何を見ているのだろう?絵と目の間に、得体の知れない空気でも存在しているのか?)

最近見た展覧会の中では、心魅かれる作品の率が一番高かったかもしれない。
そしてあらためて感じたことは、やはり西洋絵画はバロックが頂点だということ。

バロックのあとにつづく、ロココ、ロマン派、印象派、フォーヴやキュビズムにも、確かに良い作品も好きな作品もあるのだが、
やはりルネサンスからバロックにかけての名作たちの気品というか、オーラというか、それには到底かなわない。
この日、はっきりそう感じたのは、暑さのためだけではあるまい。

ティントレット、ティツィアーノ、ルーベンス、ヴァン・ダイク…、いずれ劣らぬ名品を堪能できたが、その中でも一枚とりあげたいのは、レンブラントの「老婦人の肖像」と題された、この一枚。

レンブラント

専門家の間では、いまだに真贋論争の決着は付いていないらしいが、個人的には、レンブラント作ではないと思う。
おそらくレンブラントなら、もう少し明暗のコントラストを強くしていたに違いない。

これがいわゆる「レンブラント工房」の作だとしても、あるいは同時代の何者かの手によるものだとしても、
「レンブラント風」のこの絵の価値が、僕の中で下がることはない。

老女の体がなす、三角形。角が丸いから、これは非ユークリッド幾何学的な三角形だ。
軽く握られた左手に、そっと添えられた右手、そしてその甲に刻まれた長い年月…。
色遣いは黒を主体に白と、一部に朱を加え、それが寂しさの中にも上品さを漂わせている。

頭上と下部、そして左右に同じぐらいのスペースを確保していることで、レイアウト的に余裕をもたせている。
そしてこの余裕が、年月を重ねてきた老女の貫録というか、深さを際立たせている。

ぱっと見で印象深いばかりでなく、実は細部にまで計算が行き届いているあたり、
たとえレンブラント作ではなくても、それなりの腕前の作者であることは間違いないだろう。

これを見てからマティスを見ると、もはや絵ではなく模様にしか見えない。

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