「旅する江戸絵画 ~琳派から銅版画まで」(金子 信久)
日本武尊、在原業平、
そして「源氏物語」の明石巻に見られるように、

古代の旅というものは、体制から強制された刑罰のようなものだった。

それが中世になると、西行のように、
敢えて自らをそのような境遇へと追いやる者も現れる。

そして江戸時代。

経済や街道の発達にともない、
初めて人々が「レジャーとしての旅」を楽しむようになる。

そんな思いでこの400頁弱もある本をめくっていくと、
目に飛び込んでくる1枚1枚が、生き生きとしてくる。

そこにあるのは、かつてのような悲哀に満ちたものではなく、
楽しく、自由な旅の姿である。

自由な気持ちがなければ、
旅路の景色を写生しようなどという気も起きないに違いない。

全作品、カラー図版が収められており、
見どころはクローズアップするなど、
細かな配慮もしてあるのが、うれしい。

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