「江戸の崖 東京の崖」(芳賀 ひらく)

京浜東北線・田端駅の下りホーム
四ツ谷の上智大学前
御茶ノ水駅ホーム北側の風景
等々力渓谷
・・・・
23区内でパッと思いつくだけでも、
東京の崖は容易に見つかる。

義務教育時代に、「東京は関東平野にあって・・・」などと習うけれども、
「平野」という一言で片づけられるほど、
東京の地形は単純ではない。

そもそも一万年前まで、
23区の多くは海だったことを思えば、
削り、削られ、東京に崖が多いことは、納得がゆく。

崖というのは、岬(参照)と同様、
エネルギーが集中し、発散される場である。

それを体感したければ、
崖から飛び降りてみるのがよい。

位置エネルギーは、たちまち衝突のエネルギーへと変換される。
もちろん、それを感じるまで命が続くという保証はないが。

ただ大いに憂うべきは、
東京の崖は外部からのエネルギーには脆いということ。

つまり、東京の地盤というのは、「土」なのである。

世界の大都市のほとんどは、岩盤の上に成立しているのに対し、
世界一の人口を誇る、我が国の「首都圏」は、泥の上の都なのだ。

だから、外部から強力なエネルギーが加えられれば、
地盤は沈む。崖は崩れる。

江戸を居城に選んだ徳川家康の、二次元的視点は流石であるが、
三次元的思考は、さすがに持ち合わせていなかった。

それから400年間、我が国は、依然として泥の上に都を置いている。

3.11以降、「ゲニウス・ロキ(地霊)」という単語を、
よく目にするようになったが、
東京に住む身としては、他人ごとではない。

自らが住む土地のゲニウス・ロキに思いを馳せ、
そこが泥舟の上だということを自覚し、
その上で、いざというときに何ができるのかを自覚しておく、

まずはそこから始めなければならない。

この本は、単なる東京のガイドブックではない。
そんな警告書だと、僕には思えた。

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