「カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化」(平山 廉)

割と嫌われモノ揃いの爬虫類の中で、

カメは例外的に、万人受けする生き物である。

カメの人気の原因は、その形状と、
のんびりした動作にあるのだろう。

動きが鈍いのは、カメに限らず冷血動物である爬虫類の特徴で、

それでも、いざという時には俊敏に動くものであるが、

カメは体の構造上、動くスピードにも限界がある。

つまり、カメは、敵から素早く逃げる、という行為を捨ててまで、
甲羅の中でじっと耐える、という戦略をとったわけだが、

その生き方が、人々の共感を呼ぶのかもしれない。

さて、子供のころ、

カメから甲羅を取ると、中からトカゲが出てくるのか?

などと、疑問を感じていたことがあったが、それはどうやら間違えで、

カメの甲羅は、骨格として、体とは切り離せない構造になっているそうだ。

また、どのようなメカニズムで首や手足を引っ込めるのかなど、
この本を読めば、カメの体の仕組みはよくわかる。

カメについて、個人的に興味があるのは、

・恐竜が滅びた白亜紀末の大絶滅を、カメはどうやって生き延びたのか
・カメはどのような祖先から進化したのか

という2点なのだが、

後者については、まだ化石が発見されておらず、

前者については、あの絶滅はどうやら恐竜にとっては致命的だったが、
他の動物(昆虫も含め)にとっては、
それほどのインパクトではなかったのではないか、
とのことだ。
(逆に、恐竜にだけインパクトがあったのはなぜだろうという疑問は残るが)

今から15年ほど前、記者をやっていたころ、
京都の山奥に無理やり出張に行かされたときに、

疲れと虚脱感でぼーっとしながら、小川を覗きこんだら、
カメがぷかぷかと浮いていて、
それを見ているうちに、仕事なんてどうでもよくなったという記憶がある。

果たしてそれは何かの暗示だったのか、どうなのか。

色々な意味で、興味深い生き物であることは、確かである。

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