東方見聞録

 

そういえば、全部をきちんと読んだことがないな、と思い、
今更ながら手に取ってみた。

内容に誇張や伝聞部分が多いのは否定できないが、
極端なまでに、客観的な視点で描かれているというのは、
感心する一方で、作品としての魅力を薄れさせてしまっている要因のひとつとなっている。

そもそもマルコ・ポーロの旅というのは、
商人が商業を目論んでのものであるわけで、

例えば、玄奘や義浄による求法の旅のような、
ストイックさに欠ける部分は、確かにある。

だから逆にいえば、歴史的資料としての利用価値は高いものと思われ、
モンゴル人が、異民族をいかにして服従せしめたか、
また、13世紀の人々が、いかにワールド・ワイドに商業を営んでいたか、
といったことなどを知るには、打ってつけの著作でもある。

「東方見聞録」の中に、マダガスカルに関する記述があることは、今回初めて知った。

「黄金の国・ジパング」については、いまさら述べるまでもないが、
どうせなら、足を延ばして、マルコが日本にまで来ていたならば、

その後の歴史は変わっていたかもしれないと思うと、
あるいは日本の中・近代史における「東方見聞録」の役割は、存外に大きかったのではないかと、
考えてみたくもなる。

本書の末尾にある「解説」で、
帰国後のマルコの生き様について語っている部分が、
実は本編よりも興味深かったりする。