中島敦の没年(1942年・33歳)に書かれた、
パラオ滞在時の見聞を元とした3つの短編からなる。

中島敦は、現在の僕の住居の近く(新宿区)の生まれで、
大学の学科の先輩でもあるので、
親近感のある作家のひとりだ。

3つの短編はどれも個性的で、
特に3番目の「雞」については、「私」と老人の心理的駆け引きのようなものが、
実にリアルに描かれていて、作家の力量を示すのに十分である。

芥川や太宰のような作家は、あれ以上長く生きていたとして、
更に魅力的な作品が書けていたかどうかは微妙なところであるが、

中島敦は、逆に、もっと長生きしていてほしかったと思う作家である。
それはやはり、彼の漢文の素養によるところが大きいと思われる。

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