「生命と非生命のあいだ」(ピーター・D・ウォード)

 

ウィルスは生命といえるだろうか、という話から始まり、
DNAやRNAを経て、生物の分類(ドメイン)について、

さらには、我々地球の生物とは全く異なる地球外生命体の可能性について、
火星とタイタンを中心に話が進められる。

しかしながら、
「生命と非生命のあいだ」という日本語タイトルでは、
この本のテーマとは、若干ずれてしまう。

原題は「Life As We Do Not Knou It.」、
つまり、「我々にとって未知の生命」であって、

そのような存在として、
RNA生命や、タイタンにいるかもしれないシリコン生命について検討するというのが、
メインの主題である。

ウィルスが「生命と非生命のあいだ」云々というのは、
この主題に入るための導入にすぎない。

ところで最近、インドも火星探査に参入したというニュースが報じられた。

各国がこぞって火星進出を試みているのは、
おそらく資源を目当てにしているためだと思われるが、

この本で著者が力説しているような、生物学的アプローチが十分になされているかどうかは、
正直疑問である。

太古の火星に、それなりの量の水が存在していたことは明らかなようなので、
次に行うべきは、生物の痕跡を見つけることだろう。

そしてそれが、地球の生物と同じなのか、それとも異なるものなのか。

その結果次第では、生命発生という最大の謎の解明に一歩近づくはずだ。