「新内の情景」(富士松 松栄太夫)

 

浄瑠璃を楽しむには、江戸時代の文化・風俗はもちろん、
地理や歴史の知識があった方が、断然有利だ。

特に新内節は宮薗節などと同様、素浄瑠璃、
つまり視覚ではなく、耳だけを頼りに鑑賞するものであるから、
ある程度のコンテクストの理解は必須となる。

第一章の「隅田川と新内節」では、深川を中心とした風俗を語りつつ、
『明烏』や『蘭蝶』の舞台を辿る。

第二章の「幻の新内流し」では、
今となっては演奏会でもあまり聴けなくなった新内節の、「流し」が盛んであった頃の、
エピソードが中心になっている。

新内節を知らない人でも、これを読めば、一度は聴きたくなるに違いない。