「『青』の民俗学―地名と葬制」(筒井 功)

 

日本全国に存在する「青」が付く土地は、
かつては葬礼に関係する場所だったのではないか、という本書の説は、

目の付け所が鋭く、
部分的には成程、と思わせてくれるのであるが、

地名に関する他の多くの著作と同様、
強引な論理の飛躍と、根拠の薄い推論、開き直りが多々見られ、
非常にもったいない気がしている。

学術論文ではなく、読み物だという点を考慮しても、
もう少し丁寧かつ緻密な論の展開と検証をしてほしかった。

特に、「青」の地名と葬礼が関係している例を検証し、
さらに、そうではない例外も素直に採り上げているところまではいい。

ただ、「青」と葬礼が結びつかない土地について、
それは墓地と葬送の場所が異なっていた(両墓制)せいだ、という推論は、
強引すぎはしないだろうか。

著者自身も、墓地と葬送が分別したのはそんなに古い時代ではないと述べているのだが、
だとすれば、それよりも古くから伝わっているはずの地名が、
墓地と葬送との場所のズレの影響を受けていると考えるのは、無理があるのではなかろうか。

そして、ひとつ大きな手続きが抜けていると感じたのは、
まずは「青」という言葉の語源と用法について、
徹底的に検証しなければならないことである。

当然ながら、大和言葉(「あお」)からのアプローチと、
漢語(「青」)からのアプローチの両方が必要になってくる。

その意味でも、本書において、
かつての中国でも「青山」が墓地の意味であったことを、
見事にスルーしているあたり、
やはり乱暴な展開だと思わざるを得ないのである。