「古代への情熱」(ハインリッヒ・シュリーマン)

 

10代の頃から、色々な大人に読め読めと勧められていた気がするが、
遂に読まずにこの歳まできてしまい、

たまたま古本屋で見つけたので、
それこそ遺跡を発掘したような気分で読んでみた。

そもそも僕が勘違いしていたのは、
この本はシュリーマンの自伝だと思っていたのだが、

純粋なる自伝部分は最初の四分の一ほどだけで、
残りは他人による、シュリーマンの他の著作からの引用を中心とした、
発掘活動の紹介となっている。

僕はシュリーマンという人は、もっと泥臭く清貧な研究者で、
努力と情熱だけで発掘活動を成功させた人なのかと思っていたのだが、

実はそれとはまったく逆で、
天才的な語学力と、経済力をベースにした、
かなり恵まれた研究人生だったようだ。

語学の習得方法について詳しく説明している部分が興味深いが、
ただ、間違いなくシュリーマンは語学の天才だったはずで、
通常の人間であれば、努力だけで18か国語はマスターできまい。

さらに彼には、とてつもない商才もあったようで、
四十歳ぐらいまでにビジネスを大成功させ、
残りの人生を発掘活動に自由に当てられたというのは、
やはり恵まれていたというべきであろう。
(もちろん、ビジネスでの成功も彼の努力の賜物なのではあるが)

なので、期待していたイメージとは、ちょっと違った。

これを少年の頃に読んでいたとしたら、
「何をするにもまずはゼニや!」と、今頃バリバリの仕事人生になっていたかもと思うと、
読まないでいたのは、果たして良かったのか、悪かったのか。