「暗黒星ネメシス 恐竜を絶滅させた死の星」(ドナルド・ゴールドスミス)

 

表紙がちょっとアレなので、
電車で読むのがちょっと恥ずかしかったけれども。

この本の論旨を端的にまとめるとこうなる。

1.生物の絶滅には周期性がある

2.周期的な絶滅の原因は彗星である

3.大量の彗星を地球に降らせたのは、
未発見の太陽の伴星(ネメシス)である

科学とは、仮説を立ててそれを証明してゆくものであるが、

残念ながらこれは、1~3のすべてが「仮説」である上に、
しかも1~3の因果関係も「想像」である。

つまり事実かどうか分からない事柄を、強引に因果関係で結びつけて、
あたかもあり得る「事実」であるかのように見せるのは、
SFとしては上出来であるが、科学と呼ぶには物足りない。

観測されている多くの構成が連星であることを考えると、
太陽に伴星があるという仮説は、個人的には面白いと思っている。

ただ、何もそれを生物の絶滅に結び付ける必要はないし、
何よりもその伴星自体が観測されていないのだから、
どうにもこうにも仕方がない。

そして仮説というのは、
それがなければ辻褄が合わない場合に立てるのが通常であるが、

現在の太陽系を考えるにあたっては、
別に「ネメシス」の存在がなければ辻褄が合わないことはないし、

そもそも、
そのように考えられるからといって、必要ではない存在を仮定することは、
科学の大原則(「オッカムの剃刀」)に反することである。

著者が述べているように、
科学の進歩の第一歩には、「想像」や「空想」があったことは事実であるが、

それを証明できるか、あるいは証明するための手続きをとるかが、
科学とSFとの境目でもある。