「第二阿房列車」(内田 百間)

 

阿房列車の旅は続く。

この「第二」を読み始めて気付くことは、
「第一」と比べて、文体が硬質というか、格調高くなっているというか、
とにかく前作とは違う。

例えば、上越線のことを説明するくだりの、
線路は一本の弦であり、途中の清水峠はそれを支える駒、
そこを通る列車が大きなソナタを奏でる、というフレーズなんかは、
読んでる方が恥ずかしくなるぐらいの詩的表現である。

それも含めて百間先生の魅力ではあるのだが、
やはり個人的には、あのとぼけたような、掴みどころのない文章の方が、
しっくりきてなつかしい。

ただ、内容は相変わらずである。

あてもなく列車の旅をつづけ、
車中でも宿でも、とにかく酒盛りをする。

有名人なものだから、どこへ行ってもマスコミに囲まれてしまうが、
仏頂面でテキトーに受け答えして、すげなく追い返す。

まるで内容はないのだが、それはそれでよろしい。

鹿児島を出たと思ったら、1~2行後にはもう浜松あたりを走っているという省略具合も潔いが、
それでも読ませる文章になってしまっているところが、
並みの作家には真似できないところでもある。