「中央アジア史概説」(ウェ・バルトリド)

 

学校で習う世界史というのは、欧米や中国がメインで、

ユーラシア大陸の大部分を占める、
中央アジア(トルキスタン)については、詳しく触れられることはない。

それでも、例えば『李陵』などに描かれるごとく、
歴代の中国王朝にとって、異民族対策は最重要だったわけで、

古くは匈奴や大月氏に始まり、
突厥、クチャ、ウイグル、西遼、ペルシア各王朝、ホラズム、モンゴル、ティムールなど、
数多くの民族や国家の興亡が繰り広げられたのも、この地であった。

地理的にはヨーロッパと中国を結ぶ重要エリアなわけで、
航路の発達に伴い陸路は廃れたとはいえ、

現代においても、ロシアや中国といった大国と境をなすこの地域が、
政治的、文化的に興味深い場所であることは間違いない。

というわけで、いつか中央アジアの歴史をじっくりと学んでみたいと思っているのだが、
まずは概要的なものを一冊読もうと思い、
いろいろと探した挙句に辿り着いたのがこの本だ。

わずか100ページほどの薄い文庫本ではあるが、
まるで著者自身が目にしてきたかのように、
中央アジアの歴史・地理が鮮やかに描かれている。

オアシスの定住民や砂漠を駆ける騎馬民族の姿が、
今にも目に浮かびそうなほどである。

概説とはいっても、かなり細かい部分もあり、
専門家ではない自分には分かりづらいところも多々あったけれど、

参考文献も豊富に掲載されているため、
入門書としてはこの上ないものとなっている。