「したたかな寄生」(成田 聡子)

 

寄生生物の研究というのは、
おそらく「普通の」生物よりも遅れているはずで、
たぶんこれから、どんどん新しい研究結果が
発表されることだろう。

だから今のところは、
新書ではあるが、このぐらいの本を読んでおけば、
寄生生物についての大部分は理解できるのだと思う。

個人的に興味があるのは、
例えばカッコウの「托卵戦略」は、だいぶ見破られるようになって、
もはや完璧な寄生術とはいえなくなっているようだが、

それ以外の、例えば一部の昆虫に見られるような、
ホストをゾンビ化して、自分の意のままに操るような技は、

「寄生する側」にとって一方的に有利なように感じるのであるが、
常にどちらか一方が「タダ飯食い」をしているだけでは、
生物界のバランスは保たれない。

寄生する側も、常に何らかのリスクを負っているはずなのであるが、
それが何なのか、
新たな研究結果を待つしかないのであろう。

しかしまぁ、ここで紹介されているような、
奇想天外な生態をもつ生物のことを知るにつれて、
我ら人間の世界の、なんとちっぽけなことよと思わざるをえない。

彼ら寄生生物とそのホストが、
生きるために必死にダマし・ダマされ、というのに比べれば、

会社や学校の煩わしい人間関係などは、
一笑に付すべきレベルである。

生物たちの、生きるための知恵や戦略に驚嘆することは、
人間としての生き方を考えるきっかけにもなる。