「ローマ字日記」(石川 啄木)

「ローマ字日記」(石川 啄木)

「ローマ字日記」(石川 啄木)

 

多くの人にとって、啄木は、

「清貧で夭逝した天才歌人」

というイメージが強いのだろうが、
それは間違えている、というのはこの日記を読めば分かる。

かくいう自分も、
少年時代こそ、啄木の作風に憧れた時期もあったが、
大人になってからは、例えば有名な、

働けど働けど なお我が暮らし 楽にならざり ぢっと手を見る

の短歌などは、
「アホか、働き方が悪いんじゃ」ぐらいにしか感じなくなり、

そしてその感想も、この日記を読んだことでさらに強くなったのである。

なぜ啄木がローマ字で日記を綴ったのかについては、
日本語の新しい表現用法への挑戦、というポジティブな解釈もできなくはないが、

やはり啄木自身が述べているように、
そこには妻には読まれたくない、東京での赤裸々な生活が描かれているからだろう。

そしてその生活こそが、多くの人の啄木のイメージとは真逆な、
ふしだらでだらしのない、ある意味救いようのないものなのであった。

かいつまんで紹介するならば、

・給料(会社からの前借)が入ると、すぐ女を買いに走る。
・そしてすぐに給料がなくなる。
・家賃を滞納する。
・友人からの借金は返さない。
・故郷にいる家族へも、ほとんど送金しない。
・金はないくせに、見得を張って、友人に牛肉などをごちそうする。
・創作にかこつけて会社を無断欠勤しまくるが、実は何もせずにダラダラしている。
・死にたいとか何とか言いながら、結局女を買いに出かける。
・・・・・

とまぁ、こんなカンジなので、
そりゃぁ、働いても働いても生活は楽にならんよ。

田舎の若者がとりあえず東京に出てきたものの、
自分を抑えきれずに失敗してしまった典型例だと思う。

いくつかの象徴的なフレーズを、敢えてローマ字のまま紹介しよう。

・4月10日
Yo wa Kyonen no Aki kara Ima made ni,
oyoso 13-4 kwai mo itta,
sosite 10 nin bakari no Inbaihu wo katta.
Mitu,Masa,Kiyo,Mine,Tuyu,Hana,Aki・・・Na wo wasureta no mo aru.
Yo no motometa no wa atatakai,yawarakai,massiro na Karada da.

・5月1日
Zenshaku wa Shubi yoku itte 25 yen karita.
Kongetsu wa kore de mo toru tokoro ga nai.
(中略)
“Iku na!iku na!” to omoi nagara Ashi wa Senzoku-machi e mukatta.
(中略)
Shiroi Te ga Koshi no aida kara dete Yo no Sode wo toraeta.
Fura-fura to shite haitta.
(中略)
Wakai Onna no Hada wa torokeru bakari atatakai.

・6月1日
Sha kara Kongetsu-bun 25 yen wo Maegari shita.
Tadashi 5 yen wa Sato shi ni haratta no de Tedori 20 yen.
(中略)
Sengetsu no Geshukuryo 13 yen bakari harai,
sore kara futari de Asakusa ni iki,
Kwatsudo Shashin wo mite kara Seiyo-ryori wo kutta.
Soshite Kozukai 1 yen kurete Iwamoto ni wakareta.
Sore kara, nan to ka yu wakai kodomorashii Onna to neta.
(中略)
10 ji goro kaetta.
Zasshi wo 5,6 satsu katte kita.
Nokoru tokoro 40 sen.

とはいえ、啄木が才能にめぐまれていたことは疑いようのない事実で、
だからこそ、このような自堕落な生活で自らの命を縮めたしまったことに対しては、
大馬鹿者だと言いたいのである。

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