「性食考」(赤坂 憲雄)

 

古今東西の文学作品や神話、民話などから、
「性」「食」「生」「死」についてのネタを洗い出し、

それらを重ね合わせることで、
主に「性」と「食」に共通する人間にとっての根源的な「何か」を考察する本。

目の付け所は面白いし、
この巨大なテーマに立ち向かうのはさすが、と思うけれども、

一冊を通じて、断片的なエピソードの紹介に終始している感が強く、
「論考」としての出来映えはいまひとつといった印象である。

この本に限ったことではないが、
「民話」というのはネタ探しにはもってこいではあるけれど、

逆に言えば、どんなテーマであっても、
世界の民話を探せば、
何かしらその「原型」になりそうなものは見つかるはずで、

だから僕は、民話に遡って、そこに根拠を求めるような論考は信用しない。
ある意味、「死人に口なし」だからだ。

特に「性」や「食」といった広いテーマであれば、

民話に限らず、日本文学に限定しただけでも、
それなりのこじつけはできるわけであって、

んー、心意気は認めるけれど、ちょっと敵が強すぎた、、という感じなのかな。

ただ、ここで紹介されていたレヴィ=ストロースの、

料理とは自然を加工するもので、
消化とは料理を再び自然に戻すものだ

という考えについては、なるほどと思った。