はだかの起原 不適者は生きのびる

 

現生人類に体毛がないのは、生存には明らかに「不適」である、
それは、「適者生存」を唱えるダーウィン進化論に誤りがあるからである、

というのが、この本のおおまかな主旨。

そもそも進化には、
「適者生存」のような絶対的なルールが存在するのかどうかは証明できないし、
結局は状況証拠から推論をせねばならない部分が多いわけで、
その意味で「完璧な」理論などというのはあり得ない。

その隙を狙って、自説の正しさを主張するために、
正面からの証明ではなく、他者の理論の誤りを指摘することを主戦場とするこの著者の態度は、
どうしても共感できない。

なぜ現生人類サイズの陸棲哺乳類が裸なのかという問題は、
議論・検討を重ねる価値のあるテーマだとは思うが、

この本のように他者の揚げ足を取る方法ではなく、
もっと正攻法で取り組んで欲しかった。

ダーウィンの説の一部を否定するあたりは痛快にも思えたのだが、
いわゆる「アクア仮説」を批判するあたりになると、

かなり食傷気味、
度を過ぎると即ち害となることの典型である。

「裸の人類」の謎に迫るためには、
生物学、進化学だけではなく、
社会学や言語学といった文化的なアプローチも必要なのかもしれない。

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