「人生談義」(エピクテートス)

 

哲学書なんて10代の頃に、申し訳程度にカントとかニーチェとか読んだぐらいで、
大人になってからは、まったく無縁のジャンルだったわけだが、

ふとしたきっかけでエピクテートスのことを知り、
彼の語録であるこの「人生談義」を手にしてみた。

古代ギリシャの哲学者といえば、
ソクラテスとかプラトンとか、まぁたしかに哲学書の中では多少読み易い印象だが、
この「人生談義」は、その中でもかなりライトな方だと思う。

なにせ、ひとつひとつの章が短いうえに、
それぞれのテーマがわりと生活に密着しているものが多く、
「あぁ、なるほどね」と共感できるのだ。

例えば、こんな感じ。
———————-
・「君が少しの間注意を怠る時、それを好きな時いつでも取り返せるだろうとは考えぬがいい。
むしろ今日の過失によって、必ずこれからも気にも事柄が悪くなるということを心しておくがいい」

・「君のものでない長所は何も自慢せぬがいい」

・「人々を不安にするものは事柄ではなくして、事柄に関する考えである」

・「何事にも『私はそれを失った』とは決して言うな。
むしろ『お返し申した』と言うがいい。子供が死んだって?それは取り返されたのだ」

・「もし勝つ見込みのない勝負に加わることがないならば、
君は負けるということはあり得ない」

・「死や追放やすべて恐ろしく思われるものを、毎日思い浮かべるがいい。
そうすれば君は決して何も賤しいことは考えぬであろうし、
また度を越えて何かを欲望することもないだろう」
———————-

まるで小学校の道徳の授業のように、
あらためて言うまでもない「真理」がストレートに語られる。

けれど「人生談義」の悪い点として、
結論はこのようにズバリストレートなわけだが、
それに続く解説が必要以上に長く、回りくどい傾向にある点が挙げられる。

なので全文を完璧に読破しようとすると結構厄介ではあるが、
エッセンスだけを拾い読みするのであれば、そこそこ楽しめる。

上巻よりも下巻の方が断然面白いにもかかわらず、
岩波文庫ではなぜか下巻のみ廃刊になっているらしいので、
古書で手に入れる必要がある。

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