「澁澤龍彦の記憶」(巖谷國士、養老孟司 他)

 

僕の10代の頃の読書の対象といえば、
漱石や川端のような純文学がある一方で、

夢野久作や、そしてこの澁澤龍彦のような、
ある意味「異端」なものもあった。

まさに現代のプリニウスとも呼ぶべき、
古今東西のあらゆる事象に向けて好奇の眼を向ける澁澤作品。

なかでもやはり、最後の小説となった「高丘親王航海記」は、
純文学とか異端文学とかいう垣根を超えた(内容的には純文学であるが)、
奇跡的な作品になっていると思う。

この本の最後に巖谷國士が、
その「高丘親王航海記」について解説する章があって、

作者の自筆メモを紹介しながら、
小説家・澁澤龍彦の本質にまで迫っていると思った。

巖谷を含めた5人による、澁澤龍彦への思いを語った文章を集めたのが本書なのだが、
正直、澁澤と話したことのないような人も含まれていて、
「澁澤ファン」としては、「そうじゃない」感が結構強い。

世間からは、サド裁判とかオカルトとか、
そういう奇異な眼で見られることが多い澁澤龍彦なのだけれど、

やはり本質は、先に述べた「高丘親王航海記」の世界であると僕は思っていて、
本書に登場する5人のうち、それを理解できているのは1~2人ぐらいだったと思う。

養老先生なんかは、ほとんど澁澤と関係ない話になってるし(笑)。

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