映画「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」

 

昔観たときはそれほど感じなかったのだけれど、
あらためて観ると、これは死刑問題に正面から斬りこんだ、
かなり骨太の本格社会派ミステリーだ。

死刑の無意味さを世間に知らしめるためには、

自らが冤罪を被って死刑となり、
しかも執行後に無実であったことが世間に知られることが必要である、

という、特殊な完全犯罪を思い付いた、
ケヴィン・スペイシー演じるハーバードの天才教授と、その助手。

しかもそれを、敢えてジャーナリストに取材させることで、
世間の注目度を上げることにも成功するという、

驚くほど緻密な完全犯罪のシナリオに、
観れば必ず、最後の最後で唖然とさせられるだろう。

たとえが悪いかもしれないけれども、
正攻法では証明が難しい数学の問題を、
背理法を使って裏側から解くように、

「死刑反対が正しいこと」を証明するために、
「死刑が間違えている」という命題を、身を以て証明するというそのやり方が、

現実離れしているのだけれども、(矛盾するようだが)妙に生々しくてリアルなのである。

しかも全編が、死刑囚が刑執行の3日間で独白した内容という形式なのが、
この映画に、単なるミステリー以上の重みを加えている。

ケヴィン・スペイシーは、
独白する犯人という、奇しくも「ユージュアル・サスペクツ」と同じような役回りなのだが、

あちらの怪演と、こちらの切迫した演技を見比べることで、
彼の役者としての懐の深さが、存分に味わえる。

「ユージュアル・サスペクツ」「セブン」「L.A.コンフィデンシャル」「アルビノ・アリゲーター」、
そしてこの「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」。

僕の好きな映画には、必ずケヴィン・スペイシーがいる。

こういう個性派は少ないから、ぜひとも本格復帰してほしい。

適正価格:2,200円(劇場換算)

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