デネブといえば白鳥座のアルファ星、
アルタイルやベガとともに「夏の大三角」を作る、一等星のひとつである。

ちなみにデネブは、全天21ある一等星のうちで暗い方から数えて2番目ではあるが、
地球からの距離が、他の一等星と比べてズバ抜けて遠い(約1,500光年)ため、
絶対等級でいえば、逆にズバ抜けて明るい星だということになる。

(全く関係ない話だが、「いっとうせい」を変換しようとすると、
まず「一党制」となるのが、とてもシラけた気分にさせてくれる。)

星の名前はアラビア語由来のものが多く、
「デネブ」は「しっぽ」の意味。

これもちなみに、しっぽの反対側、白鳥の嘴部分にあるのがアルビレオという星で、
同名のネットカフェはこの星から名前を取っているのであろうが、
画像をみれば、まるで宝石のような二重星でもある。

さて、「デネブ」が「しっぽ」であるということは、
全天88の星座の中には、他にもしっぽをもった星座もあるのではないか、
と思う人もいるかもしれないが、
その通り、「デネブ」という星は白鳥座だけのものではない。

まず、すぐ近くにある「わし座」のしっぽ部分に「デネブ」がある。

次に、「春の大三角」の一角をなす、しし座のベータ星が「デネボラ」。
これは獅子の尾の部分にある星で、「デネブ」と語源を一にすることは明らかだろう。

北極星もこぐま座のしっぽの部分に位置する星であるが、
こちらは「ポラリス」で、残念ながら「デネブ」ではない。

そしてここで「くじら座」に登場してもらおう。

くじら座は、秋の空を彩る代表的な星座のひとつで、
秋の空には一等星はないのであるが、

ペルセウス座、アンドロメダ座、ペガスス座、カシオペア座、
そしてこのくじら座が織りなすストーリーは、
まさに空を舞台として繰り広げられる、一大叙事詩だといっていい。

実はこの「くじら座」、実際にはいわゆる「くじら」ではなく、
海の化け物であって、

星座絵を見ても、四本の脚と長いしっぽに獣の頭、
くじらというよりは恐竜に近い。

そういえば「ゴジラ」はくじらと何かのあいのこだったっけか?
記憶が定かではないけど、くじらよりはゴジラに近いイメージではある。

またまたちなみに、海の化け物である星座は他にも、
「みずへび座」(英名:Sea Serpent)、「うみへび座」(英名:Water Monster)
があるから、

もはや「くじら座」がモンスターとして登録される枠はなく、
仕方なしに「くじら」(英名:Whale)になったのかもしれない。

そのくじら座のしっぽの部分にベータ星、「デネブカイトス」がある。

等級は2等星、ややオレンジがかった色の星で、
周りに目立つ星がないこともあり、
秋から冬にかけての東の空に、肉眼でも確認することができる。

そしてくじら座の奥深い(?)ことには、
その長いしっぽの部分に、もうひとつ「デネブ」という星があるのだ。

なんとも贅沢な星座ではないか。

整理すると、「デネブ」という星は全部で3つあり、
その他に「デネボラ」と「デネブカイトス」。

女性の前でこんな薀蓄を傾けてみれば、
たちまち好感度が上がる可能性もないではないが、
でも「デネブ」を間違えて「デブね」と言わないように気を付けるようにしたい。