文学

10/10ページ

「吉原徒然草」

「徒然草」って、20代ぐらいまでは全然好きじゃなかった。 あの行間に漂う、独特のリズムというか抑揚というか、あれがイヤだった。 でもそれが、この「吉原徒然草」のようなパロディになると、逆に魅力になるということに気付いた。 淡々と語られる、吉原の女とそれに通う男。粋、通、心構えについて。 江戸時代の文芸はパロディの宝庫だけれども、「吉原徒然草」はよく出来ている方だと思う。 内容云々はこの際どうでもよ […]

「名文どろぼう」(竹内 政明)

この本は、全体の75%が「名文」からの引用で、25%が地の文からなる。 このような場合、得てして25%の方は「駄文」に陥りやすいものであるけれども、 この本は、違った。 軽妙でありながら含蓄のある言い回しは、唸らされるものがある。 名文を名文によって紹介したのが、この本である。

「『半七の見た江戸』~「江戸名所図会」でたどる半七捕物帳」

綺堂が、かの「シャーロックホームズ」 シリーズに触発されて「半七」シリーズを書いたことは有名だけれども、 ホームズ中に描かれたロンドンの風景の大部分が 今でもそのまま残っているのに対し、 半七が見であろう江戸の風景、そして地名でさえも、現在残っているものはほとんどない。 「半七」全編に登場する江戸の地名を、ひとつひとつ図絵で紹介し、解説を付したのこの本だ。 かつて「半七」を読んだときにはあまり気に […]

「江戸のことば」(岡本綺堂)

引き続き、綺堂を。 『江戸のことば』は「綺堂随筆集」とあるけれど、怪談も数話収められている。 「半七」と同じで、綺堂の怪談でどれが一番優れているか、あるいは怖いか、などと考えるのはあまり意味がなさそうに思う。 ただこの本に収められた「深川の老漁夫」は、コワい。 話しとしては特に捻りがあるわけではないのだけれど、謎の漁師と獺(かわうそ)との関係が、多くを語られていないだけに、異常さが際立っている。 […]

「江戸っ子の身の上」(岡本綺堂)

引き続き、綺堂を。 綺堂の随筆には動物がよく登場する。 動物といっても犬や猫のような愛玩動物ではなく、蜘蛛だの、蟹だの、キリギリスだの、、といった世間ではあまり注目されない存在を採り上げるあたり、まことに綺堂らしい。 大袈裟に言ってしまえば、アウトサイダーに対する愛情、となるのだろうか。 綺堂が怪談を得意としたのも、頷ける。 『満州の夏』という随筆に、蠍の話がある。 「蠍は敵に囲まれた時は自殺する […]

「徘徊老人の夏」(種村季弘)

僕はエッセイというジャンルが好きじゃない。 他人が何かをしたり、何かを考えたり、ということに全く興味がないからだ。 それだったら、堂々とフィクションである小説や、自然科学系の本の方が興味をそそられる。 それでも中には、その文章が好きだから思わずエッセイを読んでしまう、という貴重な作家もいる。 種村季弘はそんな作家の1人で、内容は別にどってことないのだけど(失礼)、なぜかその語り口に引き込まれていっ […]

「断腸亭日乗」(永井荷風)

永井荷風先生の日記である。 1917年から、1959年の死の前日まで綴られている。 ランダムに本を開いて、目についたところから読む、そんな楽しみ方がこの本にはピッタリで、 別にこの本から永井荷風とは何か、なんてことは読み取ることはできないし、 そんな読まれ方を、おそらく筆者も期待してはいない。 例えば、こんな感じ。1925年の日記。 六月十九日。雨やみてはまた降る。 八月十三日。昨夜深更人定まるの […]

1 10