ミッシェル・モラール 著、「ライプツィヒへの旅:バッハ=フーガの探究」(春秋社)
バッハの『平均律第1・2巻』のうち、
特に優れたフーガのみを取り上げ、

物語形式でアナリーゼをする、
という内容。

物語形式といっても、
純粋な意味での物語ではなく、

詩人と数学者の二人が、
形式や構成について学びながら、
これらの曲の素晴らしさを紹介する、
といったものだ。

詩人と数学者、
というのがポイントで、

これはつまり、
バッハのフーガにおける、
豊かな詩情と緻密な計算の存在を、
暗示している。

ひとつの、あるいは複数の主唱、
そしてそれに纏わる対唱、

これらが時には反転したり、
また拡大したりしながら、

和声と旋律の世界を築く至高の芸術について、
この本は見事なまでに的確に解説している。

譜例が豊富なことに加え、
各声部を一行ごとに書き分けることで、

バッハのフーガの真の姿を浮かび上がらせることに、
成功していると言えるだろう。