キット・イェーツ 著「生と死を分ける数学:人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ」(草思社)
まず触れておきたいのは、
amazonのリコメンド・アルゴリズムは、

優秀すぎないかい?
ということ。

というのも、最近やけに、
「世の中は確率だ!数学だ!」
みたいな本を読んでいるのは、

まぁそういう分野に、
興味があることは当然なのだが、

amazonでリコメンドされる本が、
実にどれも、
「似通っている」せいである。

この本も、読み始めたときは、

前に読んだ本かな?とか、
前と同じ著者の本かな?とか、

思ってしまったぐらい。

さて、この本の内容はというと、
タイトルの通り(分かりやすい)なわけだが、

・世の中に溢れる指数的増加の罠
・医療診断結果を数学的視点で眺める
・法廷証拠に潜む確率の落とし穴
・CMやSNSでの統計のウソ
・記数法と単位の歴史
・身の回りのアルゴリズム
・感染症の数理モデル

を、各章で論じている。

特に注目したいのは、
最後の「感染症の数理モデル」で、

この本が書かれたのは、
新型コロナ・パンデミック以前なのだが、
未来を予兆しているかの如く、

例えば「反ワクチン」の態度が、
いかに数学的にはナンセンスであるかなどを、
的確に説明しており、

なかなか興味深かった。

———————-
———————-
私自身は「反ワクチン」ではないことは、
あらためて強調しておくが、

昨今の世の中の、
「反ワクチン」の主張は、
「ワクチン接種」という行為への反対というよりも、

あまりにも急造で、
それゆえに効果が不明で、

そしてあまりにも、
「海外製品の押し付けがましさ」が、
目立ってしまっていた、

「新型コロナ用ワクチンそのもの」
への不信・不安が、

原因なのだと思っている。

つまり、ワクチンを打つという行為自体は、
数理学的に、
感染症拡大を防ぐことは絶対正しいのだが、

ではそのワクチン自体が、
そもそも適正か、というのとは別問題であり、

後者はもはや、
数学の域を超えてしまっている。

なので、
均等・均質にモデル化されている、
単純な場合であれば、
数学は常に有効である。

だが、世の中の出来事には、
実に細かな要素が入り混じるため、

単純な数学ではもはや手に負えなくなる。
(そこに、「複雑系」が生じてくる)

例えば、サイコロを振るだけなら、
出目の割合は数学的に算出可能だが、

競馬の勝ち馬となると、
単にランダムな番号の選出ではなく、

馬の調子だったり、
騎手の技量だったり、
(八百長だったり)
が絡んでくるわけで、

もはや単純な計算式では、
予測不可能だし、

予測可能であれば、
そもそも競馬は成り立たない。

だからこそ、世の中では、
単純なアルゴリズムを超越した、
人工知能(AI)が不可欠になっているわけだが、

この本はそのレベルの前段階の、
「単純な数式で世の中が理解できる」
ということに焦点を当てているわけなので、

その意味では、あくまでも、
「モデル化された」内容ともいえる。