どうも我々は(僕だけかもしれないが)、
政治史と文化史とを別々に捉える傾向にある。
さらには文化史の中でも、音楽史と美術史とは、
頭の中のエリアで完全に区分されてしまっているため、
「この作曲家とこの画家は、同時代の人」ということは、
ざっくりとは分かるけれど、言われなければなかなか気付かない。
この本はブルボン王朝の歴史を軸として、
それにまつわる絵画・画家を紹介してくれているので、
政治史と文化史がアタマの中で結び付くという、
何ともいえない心地よさを味わわせてくれる。
ああ、あの画のウラにはそんなストーリー(=歴史)があったのね、と分かると、
また違った角度から鑑賞が楽しめるようになるものだ。
僕は基本的には、絵画は絵画それ自体を楽しむものだと考えて、
それに付随する背景のようなものは軽視しがちだったのだけれども、
この本を読んでその考え方は変わった。
当時の画家たちは、基本的には「宮廷画家」だったために、
やはり宮廷の動き(=歴史)の理解なしでは、
絵の理解は深まらない。
それにしても、「ブルボン王朝」と聞くと、
なんだかとてつもなく長い歴史のように感じるけれども、
その期間はわずか250年。
徳川幕府ぐらいの期間しかなかったことにあらためて驚く。
しかも安定していたと言われるのは、
「太陽王」ことルイ14世の時代ぐらいで、
そのあとに血なまぐさい革命の時代に突入することは、
ご存知のとおりである。
宗教戦争の混乱、革命による絶対主義の崩壊、王政復古と帝国主義・・・
ヨーロッパは各国が地続きなこともあり、
歴史の動きが目まぐるしい。
そんな中で、ある者は歴史に翻弄され、
ある者は歴史に背を向けた画家たちの生きざまを、
その作品とともに見つめ直してみることは、
この上なく意義深いことだと思う。