本・読書

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「光と風と夢」(中島 敦)

漢籍や歴史の登場人物を主人公としたうえで、 彼らに「近代的」ともいえる自我を持たせ、 人生や芸術について葛藤する姿を描く、 というのが、 中島敦の得意な創作パターンであるが、 この「光と風と夢」は、 「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」の作者として有名な英国の作家、 スティーブンソンによるサモア滞在中の日記という形式をとっている。 はっきり言って、 ストーリーらしきものは、ほぼない。 描かれているの […]

「東京の幽霊事件 封印された裏歴史 」(小池 壮彦)

まずは、私見から。 現代は幽霊や妖怪が住みづらい時代である、 とはよく言われるが、 しかし急速に近代化を進めた結果、 「近代的なもの」と「前時代的なもの」との、 歪みというかムラが生じてしまい、 そのムラこそが、逆に、 幽霊や妖怪の住処になっているとは言えないだろうか。 おそらくあと100年ぐらい経って、 キレイさっぱりと近代化が行き届いてしまえば、 その時こそはまさに、 幽霊や妖怪たちには退場い […]

「あなたに似た人〔新訳版〕 I・Ⅱ 」(ロアルド・ダール)

第一次世界大戦中に生まれた、 英国の作家、ロアルド・ダール。 ジョニーデップ主演の映画、 『チャーリーとチョコレート工場』 の原作者と紹介した方が早いかもしれない。 世界一有名な短編小説の名手とも評されるらしいが、 恥ずかしながら、今回読むまでは知らず。。。 ただ、今回この2冊の短編集を読んでみて、 なるほど、これはさすが、ということぐらいは、 普段小説を読まない僕にも納得がいった。 ストーリーと […]

「宇宙から恐怖がやってくる! ~地球滅亡9つのシナリオ」(フィリップ ・ プレイト)

タイトルはトンデモ本ぽいが、 かなり正統な科学の本。 「disaster」(災害)という単語は、 「star」(星)を語源としているという。 つまり昔の人にとって、 災害とは空の向こうからやってくるものであった。 そのような災害のうち、 小惑星衝突 太陽フレア 超新星爆発 ガンマ線バースト ブラックホール接近 エイリアン襲来 太陽の死 銀河の破局 宇宙の死 といったトピックを取り上げて、 これらが […]

「新方丈記」(内田 百間)

終戦前後の小屋暮らしを描いた『新方丈記』と、 百間が語った内容を文章化した『百間園夜話』を収録。 『新方丈記』については、 以前紹介した『東京焼盡』とほぼ同じ内容なので、 あらためてここで触れられることも少ないのではあるが、 あらたに追加になっていた内容で、 思わず笑ってしまったのが、 百間の師である漱石の思い出を語った部分。 たとえば、 空襲で家を焼き出された後、 百間と共に小屋で暮らすことにな […]

「人喰い-ロックフェラー失踪事件」(カール・ホフマン)

最初におことわりしておくと、 この本はオカルトでもホラーでもなく、 異文化同士の接触を生々しく描いた、 文化人類学的ルポルタージュである。 1961年、あのアメリカの大富豪ロックフェラー家の御曹司である、 マイケル・ロックフェラーが、 ニューギニア島での美術品収集の旅の最中、 乗っていたボートが転覆し、 行方不明になるという事件が発生する。 アメリカはもちろん、 ニューギニアの統治を目論むオランダ […]

「大江戸の飯と酒と女」(安藤 優一郎)

最初に、「飯」と「酒」は分かるが「女」とは何事だ、 というご意見もあろうかと思うので、 著者に変わって弁解を。 江戸は、男性の数が女性の2倍近くという状態だったため、 如何せん、物事が男性目線にならざるを得ない。 まぁ、「大江戸の飯と酒と色恋」ぐらいにしておいた方が、 無難だったのかもしれないけれど。 タイトルについてはさておき、 内容はまさにそのもので、 江戸の食事、酒、色恋について、 興味深い […]

「『偶然』の統計学」(デイヴィッド・J・ハンド)

結びにある、古代ローマのペトロニウスの、 「偶然にはそれなりの理由がある」 という言葉が、 この本の主旨をズバリ表現している。 我々は「ほどよく平均的な」考え方に慣れているため、 たとえばサイコロを10回振って、 10回とも同じ目が出たとしたら、 それはあり得ない、 きっとイカサマに違いない、と思いたくなる。 果たしてそうなのか? この本では、 一見「とてもあり得なさそうな」事象について、 著者が […]

「バッハと対位法の美学」(松原 薫)

バッハは言うまでもなく、 「対位法の大家」と見做されているが、 主に18世紀から19世紀初頭にかけて、 対位法観はどのように変化したのか、 そしてその中で「バッハ作曲技法の正典化」が、 どのようにして生じたのか、 について論じた本。 どちらかといえば学術論文っぽく、 けっして気軽に読める本ではないので、 要注意かも。 18世紀の批評家・音楽家6人(ハイニヒェン、マッテゾン、マールプルク、キルンベル […]

「翻訳語成立事情」(柳父 章)

近世になって、外国語が輸入されるようになり、 それがもともと日本には存在しないような概念だった場合に、 どのような訳語にすればよいのか、 当時の知識人たちが相当悩んだであろうことは想像に難くない。 そしてその訳語が、 まったくの造語であるならば問題ないのだが、 それより以前に、別の意味で使われていた語だと、 事情はややこしくなる。 この本でも紹介されている分かり易い例でいえば、 「nature」と […]

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