本・読書

1/78ページ

「斜め屋敷の犯罪」(島田 荘司)

舞台となる風変わりな館と、 謎の人形。 この設定は、 『黒死館』へのオマージュと考えていいのかな。 あそこまで衒学的でも、 難解な文章でもないし、 (いや、むしろライトすぎる) 一方で、大胆なトリックは、 なかなか読み応えがあって、 殺人の動機とか、 一部の仕掛けにやや不自然な部分はあるものの、 総じて楽しむことができた。 特に2番目の殺人、 このトリックがまさに作品の肝というか、 むしろ「すべて […]

「古典は本当に必要なのか、否定論者と議論して本気で考えてみた。」(勝又 基)

2019年、明星大学において行われた、 古典肯定派、否定派2人ずつをパネリストに迎えての、 討論会を収録した本。 企画自体は興味深いが、 不満な点がいくつかある。 不満その1: そもそも、討論になっていない。 否定派は明確なロジックで意見を述べ、 回答を求めているのに対し、 肯定派は、論旨のずれた意見を開陳するだけで、 最初から最後まで、議論が噛み合わない。 不満その2: テーマが不明確。 (主に […]

「創られた『日本の心』神話 『演歌』をめぐる戦後大衆音楽史」(輪島 裕介)

「演歌」といえば、 着物の姿の歌手がこぶしを利かせ、 二六抜きやヨナ抜き短音階で、 哀愁を帯びた歌詞の曲を唄う、 というイメージが、 誰にでもあると思う。 そしてそんな「演歌」を、 「日本人の心」、 さらには「日本の伝統音楽」、 として捉えている人も、 少なからずいると思われるが、 果たしてそれは正しいのか。 そして、 「演歌=日本人の心」 の図式が出来上がったのは、 いつ頃、何がきっかけだったの […]

「『無伴奏チェロ組曲』を求めて:バッハ、カザルス、そして現代」(エリック・シブリン)

6楽章×6曲、 偉大なる楽曲の構成に倣った36章で、 バッハ、そしてこの曲をまさに「蘇らせた」、 巨匠・カザルスの伝記、 そして現代を生きる著者によるバッハ体験、 を綴った本。 著者はもともと、 ロックやポピュラー音楽のライターらしく、 ある日、 組曲一番の前奏曲をライヴで聴いたことで、 バッハの音楽にのめり込んだのだという。 チェロを習い始め、 カンタータの合唱を学ぶ合宿に参加するなど、 著者の […]

「なぜ古典を勉強するのか:近代を古典で読み解くために」(前田 雅之)

「なぜ古典を勉強するのか」 というタイトルに惹かれて、 この本を手に取ってみた。 まずは自分の話から。 高校を1年で中退。 けれど、 何がきっかけか覚えていないが、 『伊勢物語』や『源氏物語』などの、 いわゆる「日本の古典文学」に興味を持ち、 東大の国文科へ進学。 某教授とソリが合わず、 丸々2年間大学には行かなかったのだが、 その間に、『源氏物語』や八代集を、 原文で通読しながら、 いわゆる「日 […]

「こんな日もある 競馬徒然草」(古井 由吉)

1986年から約30年間、 著者が他界する前年まで書き綴った、 競馬についてのエッセイ。 冬の日に照らされて散る葉には、 風にうながされるのもあれば、 風の合間の静まりに、どういうものか、 一斉にはらはらと落ちるのもある。 燃え盛った紅葉に、わずかな風が吹き付けても、 葉が騒ぎ立って、紅の嵐のように見えることもある。 というような、味わい深い文章もあるけれども、 基本的には、 トーセンジョーダンが […]

「第八の探偵」(アレックス・パヴェージ)

いわゆる「作中作」モノのミステリー。 登場人物は編集者と作家の二人で、 その作家の書いた、 七編からなるミステリー短編集について、 編集者がインタビューする形式で、 物語は進む。 インタビューとはいいながら、 編集者が作家の前で、 各短編を朗読するという儀式があるため、 我々読者も、 当然すべての短編を読むことになる。 この小説の特徴は、 推理小説に数学的定義を与えたことで、 具体的には、 探偵・ […]

「和洋折衷音楽史」(奥中 康人)

「『日本音楽』対『西洋音楽』というような、 わかりやすい二項対立の図式に陥ることなく、 伝統を継承しつつ新しいものも採り入れ、 うまく両者が習合している音楽文化」 についてのエッセイ集。 たとえば、 江戸末期から明治にかけて、 我が国がようやく西洋に門戸を開くと、 西洋音楽やそれを演奏する楽器が、 どっと日本に入ってくることになる。 そうなると、 それまで日本に根付いていた、 三味線や琴の音楽に、 […]

「京大 おどろきのウイルス学講義」(宮沢 孝幸)

この本に説得力があるのは、 著者がウイルスの専門家であるとともに、 獣医であることだと思う。 どういうことかといえば、 本書でも再三触れられているとおり、 現在研究が進んでいるウイルスは、 ヒトの病気の原因になる、 いわば氷山の一角だけであり、 その他大部分のウイルスは、 動物に潜んでいる。 動物が宿主のうちは無害なウイルスが、 ヒトに感染したときに、 病気を起こす場合が厄介なのであり、 であれば […]

「戦場のコックたち」(深緑 野分)

第二次大戦中、 コック兵として従軍したアメリカ人の主人公が、 ノルマンディー上陸作戦から、 ドイツの降伏までの数年間、 戦場で生と死や友情など、 様々な経験を通じて、 成長してゆく物語。 2つの点で騙された。 (決して悪い意味ではなく) その1。 この本が創元推理文庫であることと、 様々なミステリー賞を獲っていることから、 本格的なミステリーだと思っていた。 確かに戦場の生活で、 いくつかの不思議 […]

1 78