本・読書

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「虚無への供物」(中井 英夫)

夢野久作『ドグラ・マグラ』、 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』と並ぶ、 「日本探偵小説三奇書」と呼ばれていることを知り、 前2作のファンである自分としては、 読まないわけにはいかなかった。 読後の第一印象としては、 「奇書」というよりは、随分と手の込んだ傑作だなというもの。 1954年から55年にかけての、 洞爺丸事故や聖母の園事件といった、 社会を揺るがした実際の事件・事故をベースとし、 そこに「呪 […]

「ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう」(スティーヴン・ホーキング)

昨年3月に他界した、現代が誇る宇宙物理学者の遺作。 1 神は存在するのか? 2 宇宙はどのように始まったのか? 3 宇宙には人間のほかにも知的生命は存在するのか? 4 未来を予言することはできるのか? 5 ブラックホールの内部には何があるのか? 6 タイムトラベルは可能なのか? 7 人間は地球で生きていくべきなのか? 8 宇宙に植民地を建設するべきなのか? 9 人工知能は人間より賢くなるのか? 1 […]

「佐野のわたり」(宗碩)

佐野のわたり、といえば有名な歌枕で、『万葉集』の 苦しくも 降り来る雨か 三輪の崎 佐野の渡りに 家もあらなくに をベースとして、例えば定家による、 駒止めて 袖打ち払う 陰もなし 佐野のわたりの 雪の夕暮れ は『新古今和歌集』中の名歌としてよく知られている。 宗碩のこの紀行文も明らかにそれを意識しており、 三輪が崎へ行くほど、雨俄かに降りきぬ。 かの万葉の古言ただ今のように思ひ出られて、 「雨宿 […]

「宗祇終焉記」(宗長)

越後府中(今の直江津辺り)に滞在中の、 師・宗祇を訪ねた宗長が、 病身の師とともに草津、伊香保、江戸、鎌倉を経て、 箱根にて宗祇の死に立ち会い、 哀しみの中で駿河へ戻る、という紀行文。 印象的な記述が二つあって、一つめは、 「富士をいま一たび見侍らん」 という病気の宗祇の願いを聞いて、 越後から信濃路を南下し、 宗長は草津、宗祇は伊香保という、 「名所の湯」にそれぞれが留まるという場面。 そして二 […]

「生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像」(中沢 弘基)

生命の誕生と進化についてのこれまでの常識に、 果敢に挑戦した、ユニークではあるが決して荒唐無稽ではない、 意欲的な著作。 著者の説を簡単にまとめると、 生命誕生に必要なアミノ酸は、 地球の「後期重爆撃期」の隕石衝突時の化学反応によって生じ、 そして海底深くに埋まったそれら物質が、 プレートテクトニクスにより沈み込む際に、 「生命個体」となる、というもの。 生命は、従来説のように海中ではなく、 海底 […]

「北国紀行」(尭恵)

1485年、美濃国の郡上を出発した尭恵上人が、 北陸に出て柏崎から草津・伊香保へ南下、 武蔵野を巡ったのちに鎌倉を訪れ、 帰路ふたたび越後に入ったところで終わる紀行文である。 文章が全体的に平易で読み易く、 そして何よりも、隅田川、鳥越、湯島、中野、鎌倉、江の島といった、 東京生まれの自分が何度も訪れた土地(中野は僕の地元だけれど)についての記述が、 とにかく興味深い。 最近仕事で、武蔵野線経由で […]

「高校数学でわかるマクスウェル方程式」(竹内 淳)

電磁気学については多少の知識はあったけれど、 かのマクスウェルの方程式については、 実はあまり理解しておらず、 ちょうどよい本を見つけたので手に取って見た。 第1部にて電気・磁気とは何か、 そしてクーロン力について学び、 第2部で、第1部に出てきた各種の数式を、 バージョンアップさせた形としての、 マクスウェルの4つの方程式を提示されることで、 (さらにガウスの法則との関連も併せて) おぉそういう […]

「日本人とリズム感 ―『拍』をめぐる日本文化論―」(樋口 桂子)

一番の衝撃は「あとがき」に書かれた内容だった。 著者は大人になってからチェロを習い始めたそうで、 そのときに師事した先生のことが書かれていたわけだが、 最初は温厚だった先生が突然、 「あなたにはリズム感がない!」と怒り出し、 それからはひたすら数か月、間開放弦を弾くのみ。 その間もずっと怒鳴り散らし、 著者が体でリズムを取る様子を、 「気持ち悪い。薄気味悪い。恐怖すら感じる」と、 罵倒し続けたのだ […]

「筑紫道記」(宗祇)

言わずと知れた、室町時代の連歌師・宗祇。 彼が山口を出発し、 博多・大宰府などの福岡県北部を周遊、 36日間かけてまた山口へと戻る旅路を綴った紀行文。 宗祇は発句(五・七・五)だけでなく、 当然ながら和歌(五・七・五・七・七)の名人でもあるわけだが、 前者は人に頼まれたときなど、つまり「ハレ」、 後者はその時々の心情を吐露する、つまり「ケ」、 といった具合に使い分けているのが、 当時の発句と和歌の […]

「私の戦後追想」(澁澤 龍彦)

僕が周期的に読みたくなる作家はそう多くはなく、 夏目漱石、寺田寅彦、内田百間、岡本綺堂、永井荷風、 そして澁澤龍彦ぐらい。 澁澤龍彦といえば、 何と言っても、古今東西、博覧強記、 あのディープな世界が魅力なのだが、 この本は、テーマを定めることなく、 身の回りを綴った軽いエッセイを集めた本。 皇居を壊して道路を通せばどれだけ便利か、とか、 明治政府以来政治家は田舎者なので東京をダメにしたとか、 現 […]

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