新書は、良い。
文庫本で古典を読んだり、
ハードカバーでデザインや科学関連の本を読んだりするのも好きだけれど、
やはり新書を片手に酒をちびちびやるのが、
この上ない快楽だ。
と思ったら、
「場末の酒場、ひとり飲み」
なんて本を見つけた。
いきなり酒場の紹介から入るわけではなく、
そもそも場末とは何か、
という考察から始まるあたり、なかなか礼儀正しい。
そして場末の誕生にもいくつかのパターンがあることに言及し、
いよいよ各論へ突入する。
そこから先は、
まさに場末の居酒屋でオンボロテレビでも眺めながら、
特に銘柄もないような日本酒を舐めるかのごとく、
何とも心地よいペースでページが進んでゆく。
場末として採り上げられた、
日暮里、舎人、根岸、錦糸町、鐘ケ淵・・・。
そういえば東京にはそんな場所もあったっけ、
というような場所から、繁華街にある意外な場末まで、
別に酒場としてではなくても魅力的な土地を描いていく。
酒には、こういう風に飲まなくてはならない、という決まりはないが、
やっぱり色々なことを考えながらひとりで楽しむものだということを再実感したし、
そして何より、
駅のホームのベンチで、ほろ酔い気分で帰りの電車を待ちながら、
来し方行く末を考えるのが醍醐味だ、
なんて書かれているのを読むと、
さすが、分かっていらっしゃる、と嬉しくなったりもする。
新酒はよく分からないけれど、
新書は、良い。