「小川未明童話集」(小川 未明)
2009年の暮れは、
この童話集をコートのポケットに忍ばせていた。

電車に乗って降りるまでの間に1話が読める。

そしてどれもがあったかい。

宮沢賢治があれだけ評価されるのなら、
小川未明はもっと評価されなければ、おかしいと思う。

いや、というよりも、
(少なくとも)わが国では童話や民話に対する評価自体が、
不当に低いのではないだろうか。

漱石や鴎外のようなカタクルシイ文学こそが高尚なのであって、
人魚が出てきたり動物が喋ったりする物語は、
小学校の教科書レベル、と思われている気がしてならない。

でもそれは文学に限ったことではないかもしれない。

「簡潔なもの」「素朴なもの」は、
そのシンプルさゆえの美しさを評価される前に、
「幼稚だ」「拙い」という眼で見られてしまう。

それは音楽も美術も同じかもしれない。

その理由としてはいろいろ考えられるけれども、
1つには、難しいもの=高尚である、としないと、
それでご飯を食べている先生方が困るからだろう。

年越しはいつも、
何らかの本を読もうと(まぁ、いつも読んでるのだが・・)心構えをするのだけれども、
なぜ去年の暮はこの童話集にしたのかは、
よく覚えていない。

素朴な感傷に浸りたかっただけかもしれない。

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