引き続き、綺堂を。
綺堂の随筆には動物がよく登場する。
動物といっても犬や猫のような愛玩動物ではなく、
蜘蛛だの、蟹だの、キリギリスだの、、
といった世間ではあまり注目されない存在を採り上げるあたり、
まことに綺堂らしい。
大袈裟に言ってしまえば、
アウトサイダーに対する愛情、
となるのだろうか。
綺堂が怪談を得意としたのも、頷ける。
『満州の夏』という随筆に、蠍の話がある。
「蠍は敵に囲まれた時は自殺する。
己が尻尾の剣先を己が首に突刺して仆れるのである。
・・・蠍もまた一種の勇者である。」
蠍が自殺をするという伝説は確かにあるらしく、
調べたところ2、3散見した。
けれど、「敵に囲まれる」なんていう状況は、
蠍の世界ではなかなかあり得ないだろう。
綺堂の達者な表現に、おもわずニヤリとしてしまう。