芸術、いや文化とは何か、と問われたら、
それは「かたち」であると答えたい。
さらに踏み込むならば、
「かたち」の発見と伝承、そして「かたち」に精神を吹き込むこと、
と言ってもいい。
かつて西洋の誰かが、美しい音色を響かせるために、
ヴァイオリンという楽器を作った。
そしてその楽器を、より弾きやすくより響きやすくするためには、
曲線のフォルムが良いということを発見し、
それは500年経った今でも伝承されている。
しかしその「かたち」そのものに価値があるのではなく、
あくまでもその「かたち」を活かして演奏するところに、
文化的意味がある。
モノのかたちだけではない。
教会での神に対する祈り方、神社での参拝の仕方、
「おはよう」という日々の挨拶・・・
モノだけではなく、精神活動においても、
「かたち」というものがいかに重要であるかが分かるだろう。
この本は、そんな様々な「かたち」のうち、
日本古来のものにスポットを当てた、小さな写真集である。
難しい解説は、一切ない。
ただ淡々と、「かたち」を写真で紹介するだけである。
「これだけ『かたち』を紹介したんだから、
あとの意味は自分で考えてくれ」というような態度の、
こういう本は個人的には大好きだ。
ヘタな解説がすべてを台無しにすることがある。
何を感じるかは、読み手にまかせてほしい。
何かを感じるのか、何も感じないのか—読書というものは、
ある意味、感受性と想像力のテストのようなものかもしれない。
「日本のかたち」から何を感じ取れるか。
この本を手に取るたびに、違う答えが待っている。