原研哉氏の本は、ほんの少しでも、
「クリエイティブに関わっている」と思う人だったら、
絶対に読んでほしい。
僕が(生存している・失礼・・)人を褒めることはまずないのだけれども、
それだけこの人の書いている本は抜群に面白い。
というか、作家になった方がよいのでは、
と思うぐらい味わい深い文章を書く。
パリはまだまだ、食べきれないカマンベール・チーズなのである。
なんて、並大抵の人間に書けるフレーズじゃないと、思う。
何気なく、軽いタッチで書いた文章の奥に、
実はデザインの奥義が潜んでたりする、
一言でいえばそんなエッセイ集だ。
ある分野で有名になると、気取り、というか、
衒いのようなものが出てくるのだけれども、
この本にはそれがない。
あくまでマイペースに、謙虚に、
誤解を恐れずに言えば、「等身大で読める」。
いま、パラパラとページをめくってみると、こんな一節がある。
著者が、東京のデパートのサマーギフト・キャンペーンの写真を撮るために、
わざわざアフリカの砂漠まできて、
先の見えない砂の中を車に乗せられてひたすら走る。
退屈なんで音楽でもかけてもらおうと、
カセット・テープ(古っ!)を取りだす場面である。
日本から持ってきたカセット・テープを思い出し、
バッグから取り出してフィクサーのスベアに渡す。
「ジャパニーズの音楽か」
いや、ボサノバだと答えるが、
興味もなさそうにスベアはそれをデッキに放り込む。
結局、ボサノバはもっと優雅なところ聴かないとダメだ、
って自己完結して、テープを止めてもらうと、
そのスベアという現地の男がかけたテープは、
アラビアン・ポップス、というオチへとつながるのであるが、
まぁ、こんなどうでもいい話が、
とにかく面白いのである。
東京のデパートの「サマーキャンペーン」とのイメージの相違が、
思わず苦笑を誘ってくれる。
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さらにパラパラとページをめくって読み返していたら、
あっという間に30分が過ぎていた。。。危ない危ない。