最近の「ナショジオ」の記事から抜粋。
シデムシの幼虫は、
両親が地中に埋めたネズミの死骸をエサとする場合が多く、
母親が口移しで死肉を幼虫に与える。
「子どもたちは母親に必死でエサをせがむ。
だが途中でエサがなくなると、
母親は給餌が済んでいないお腹を空かせた子どもたちを食べてしまう」
と、『A Natural History of Families(家族の自然史)』の著者である、
カナダ、ウィニペグ大学の生物学者スコット・フォーブス氏は話す。
この行動は食糧需給のバランスを取るために行われる、
“間引き”と考えられている。
生まれた幼虫が、
エサ用の死骸でまかなえる数を超えている場合も多い。
母親による戦略的な共食いで、
“イス取りゲーム”で残った子どもの生存率が上がるのである。
最近の災害で、取り残された猫達の共食いが話題になったが、
ヒトを含めた霊長類でさえ仲間を食すことはあるのだから、
昆虫においてそれが見られても別に不思議ではない。
興味があるのは、
共食いの順序をどのように決めるのか、ということ。
仮にヒトの場合であれば、
様々な利害関係が順序を狂わすことがあるかもしれないが、
自然の流れとしては、弱っている固体から狙われるに違いない。
しかしながら、病気で弱っている場合だったら、
被食側の病原菌が捕食側に移るというリスクもあるので、
「弱り方の見極め」も必要になってくる。
なんとも難しい判断だ。
今回のシデムシの記事で驚きなのは、
別に母が子を食べるという事実などではなくて、
被食個体の選別の仕方の合理性である。
エサをもらえなかった幼虫は、
その時点で弱っているわけではない。
また、次のターンでは、
最初にエサをもらえる可能性だってある。
ただあくまでも現時点では、
弱る可能性が、わずかではあるが一番高いというだけで、
被食個体とされてしまう。
親虫のこの瞬時の選択は、
まさに本能的な勘としか言えないであろう。
良かれ悪しかれ、
ヒトの親ではこんな冷静かつ無情な判断はできないに違いない。