古本屋というものは、その他の商店とは勿論のこと、
通常の書肆とも大いに異なる存在である。
一瞬入るのを躊躇わせるような入口があり、
一歩足を踏み込んだときに鼻に飛び込んでくるあの独特のにおい、
目に飛び込んでくる茶けた色々、
そして一冊を手にしたときの、あのざらっとした触感。
一体この本は、
如何なる出自と如何なる所以をもってここに辿り着いたのか。
一冊一冊に、それぞれの重みがある。
そして、本を開いたときの、またあのにおい。
ヌード写真集や大人向け雑誌を積んだコーナーが、
「お決まり」のようにあり、
その奥には店主が仙人の如く鎮座している。
今日はじめて入った事務所の近くの古本屋にも、
仙人は、ゐた。
本を二冊買った。
仙人は、お釣りを渡すときに、
まるで我が子の旅立ちを見送るかのような、
優しい眼をしていた。