「海獣」の紋様の入った鏡のことかと思いきや、
そこにはイルカやクジラは登場せず、
なぜこの鏡に「海獣」という名が冠せられたかは、
結局は謎のままだった。
逆に、そこに登場する動植物、
つまり、ライオン、孔雀、そして葡萄については、
かなり詳細に考察が述べられていた。
天武朝前後の、
日本・中国・朝鮮半島をめぐる政治的な動きと、
それに付随する文化的な交流については、
かなり興味深く読むことができた。
むしろ、型から外れないことこそがデザイナーの仕事だった、
というあたり、
プロフェッショナルな仕事に対する当時の考え方が、
わずかながら見えた。