とある時代のとある場所に、
文化的なエネルギーが極端に集中することがあるのは、
歴史が証明している。
19世紀末のウィーンや、
20世紀初めのパリなどはその典型だろう。
そこで生きた文化人や芸術家たちについては、
そのひとりひとりを主人公にしても十分に映画が作れるほどなのだが、
思い切って全員登場させてみてはどうか、
ただそれだとあまりに重くなるから、
コメディタッチにすることを忘れずに、、
というように作られた(と思われる)のがこの映画。
次々に現れるアーティスト達のそっくりさん?には苦笑するしかないのだが、
でもその「おふざけ」の部分を取り去ると、
実は安っぽい恋愛映画だったりする。
あとは、「昔の時代はよかった」というお決まりのセンチメンタリズム。
それでもこの映画を憎めなくしているのは、
主人公の素朴さやパリの街並みの映像、音楽、
そして映画全体を取り巻く「なんかあったかい」感覚が、
厭味やありきたり感を取り除いてくれているせいだろう。
この映画には、
登場するアーティストたちの作品はほとんど登場しない。
作品を映像で見せることなしに、
その作家や作品の「雰囲気」を伝えることにも、
この映画は見事に成功していると思う。
いや、ここで描かれたパリという街が、
作家や作品そのものだ、ということなのかもしれない。