ハードカバーで400頁以上ある、かなりのボリューム。
内容はタイトルのとおり、古今東西の「奇人」たちのエピソードが満載してある。
そもそも奇人とは何ぞや、ということだが、
アブノーマル度で言えば、狂人>奇人>変人 だろうか。
狂人のエピソード集だと、読むのは精神的にキツいし、
変人だと範囲が広すぎて、ちょっとつまらない。
つまり「奇人」というところが、絶妙なバランスなのであって、
その人が、狂人なのか、奇人なのか、変人なのか、
は議論が分かれるところだと思うが、
手当たり次第に「ヘンな人」を選ぶのではなく、
上記のようなことを、著者が常に考えながら人選をしているのには、
好感がもてた。
個人的に印象に残った奇人は、下記の二例。
・その1
フランス革命時、とある本好きの貴族が、
死刑場に連れて行かれる途中でも読書を続けていた。
そして、到着を知らされると、そのページにしおりを挟んで、
ギロチン台に向かった・・・。
・その2
とある貴婦人が、死ぬときぐらいはせめて綺麗でいようと、
美しく着飾り、部屋も煌びやかに、床やベッドには花を敷き詰め、
最後の晩餐のあと、毒物を飲んで静かにベッドに横たわった。
しかし、食後だったこともあり、猛烈な吐き気に襲われ、
このまま吐いてはベッドが汚れる、
とあわてて洗面所に駆け込んだところ、
つまずいて転び、洗面台に頭を打ち付けて、そのまま絶命した・・・。
とまぁ、こんな話のオンパレード。
ただ、上の二つを書いていてあらためて思ったのが、
ほとんどの「奇人」たちは、最後、不幸に死んだり行方知らずになったり、
ハッピーエンドの人生は稀だということ。
奇人だからといって、その人生がバッドエンドである必然性はないはずなのだが、
人の生き方と死に方とは、何かしらリンクしているということを、
思わずにはいられない。
奇人が悪い人生を送ったというわけではないのだろうが、
僕は奇人ではないので、本当のところは分からない。