江戸時代に多く描かれた、「鯰絵」の、
多様性の紹介と、その起源や意味するところを、
民俗学的に追究した著作。
鯰と地震の関係といえば、
現代においては、「ナマズが地震を予知する」という、
半ば迷信的ないわれがメインとなるが、
もともとは、地震は鯰が引き起こすものであり、
また時として大地震は、貧困層にとっては、富の再分配という効能があるため、
鯰=善であり悪である、という、日本の自然観や宗教観によくあるパターンに、うまく収めることができる。
「鯰絵」という題材を採り上げたことは、筆者の炯眼によるものであるが、
論の展開は、やや強引すぎる箇所も見受けられる。
日本の民話や説話を、要素レベルにまで分解すれば、
共通要素を数多く抽出することができる。
それらの要素を、再構築し、別の角度から見直すことで、
本来関係のないものが、実はそこに起源があるのでは、と勘違いするようなことが起こるのは、想像に難くない。
この本においても、鯰と地震の関係性や、なぜ鯰なのか、という核心の部分に、
水神や河童、猿までも登場させ、こまごまと説明を述べているのであるが、
個人的には、それは深読みのしすぎであって、
意外と単純なことが原因なのではないかと、個人的には思っている。