「地震、雷、火事、親父」というのは、子供の頃より漠然と、
「怖い順」なのだと思っていた。

しかしあらためて考えてみると、どうも腑に落ちない点がある。

例えば、雷と火事の順番であるが、
どう考えても火事の方が被害範囲も被害者数も大きいはずなのに、
なぜこの順番なのか。

何かしら理由があるだろうと思い、いろいろ考えてみたところ、
これは「避けられるかどうか」という点が考慮されているのではないか、という結論に達した。

親父に叱られる時は、当然予測がつく。
理由もなく叱るような親父は、気が違っているか余程の酔っ払いだろう。

火事は魔物に追われるのと一緒で、
とにかく火の元から逃げさえすれば、最悪の事態は避けられる。

雷はどうか。
これは実にたちが悪く、遠くに落ちている分には音が五月蝿いぐらいだが、
ピカッとなって直後にドン、というように、
いきなり至近距離に現れることだってありうる。

まさに神出鬼没、「神鳴り」である所以でもある。

そして、地震。
なにせ予測不可能、しかも広範囲。さらには被害も甚大。
天災の最たるものであることは、先の震災を持ち出すまでもない。

さて、最近、地震予測に関する興味深い記事を時事通信のwebで見つけた。

「地震予知は可能」と題されたインタビューで、
最初にぱっと見たとき、どうせまた東大の年寄教授が、
浮世離れしたことを語っているんだろう、と思った。

なぜならば、「地震は予知できない」というのが、僕の中の常識だからだ。

しかし、読み進めるうちに、僕の考えは大きく変わった。

「地震は予知できない」という常識は、半分正解で半分誤りなのだ。

つまり、僕の知っている、古典的な「地震学」においては、
地震は予知できないことになっているのだが、
他の分野の研究者の間では、地震は予知できる、ということになってきているようなのだ。

そのカラクリが、このインタビューで明かされているのだが、それが実に興味深い。

東大をはじめとする、地震学者たちは、毎年研究費を確保するために、
とにかく地震計を並べ、研究者を張り付けているというのだ。

ひたすら地震を計測する。だから地震のメカニズムの解明は進む。
しかしそれは予測とは何の関係もない。

たとえて言えば、クルマのメカニックに精通している人が、
必ずしもクルマを上手く運転できるとは限らないのと一緒で、

いやむしろ、メカニズムに精通しているからこそ、
それとは別の要素に左右されることを嫌うわけだ。

では地震の予知については何の研究もされていないのかと言われれば、そうでもない。

最初はギリシャで始まったらしいのだが、
地磁気や地電流、大気中の電波、地下水などの動きを計測することで、
地震予知の研究は、少しずつ進んでいるらしい。

しかしながら、驚くなかれ、
地震学全体に割り当てられた予算が4億円なのに対し、
そのうち予知に使える研究費はわずか1,700万円。
これでは、何も進むはずがない。

関東大震災が起きたのは、今から90年前。

あれから90年間、地震学者たちは、研究費を食いつぶしながら、
ひたすら地震計を眺めていたということか。

何ともお粗末である、、、では済まされない。

もっと早くから地震予知の研究を進めていれば、
阪神や東日本の大震災の犠牲者も激減していたはずなのだ。

この原因はなにかといえば、研究分野が縦割りになっていることに尽きる。

つまり地震については地震学者が独占していて、予知などには全く興味がないのだ。

今回インタビューを受けている上田名誉教授は、
地震学者ではなく、地球物理学者であり、

海外を含め、地震予知に乗り出している研究者は、
物理学者や生物学者など、地震学以外が専門だ。

だから、上田教授が語っているように、早急に「地震予知学」という分野を確立し、
研究者を増やさなくてはならない状況なのであると思われる。

しかし、大きな問題がある。

仮に、地震予知学が確立し、ある程度の地震予知ができるようになったとしよう。

現状の法律では、内閣総理大臣が警告を出せるようになっているそうだ。
けれども、実際に出せるのか、という問題が出てくる。

台風であれば、近づいてきているのが衛星画像で確認できるが、
地震は確認ができない。

つまり、「東京に震度7がきますよ、避難してください」と総理大臣が言って、
地震が起きなかった場合の混乱たるや、相当なものなわけだ。
(もちろん、実際に起きた場合の混乱の方が比べものにならないのだが、
いわゆるオオカミ少年的な心理がそこには働く)

研究者からしてみれば、予測が外れた場合のリスクなんか負いたくないし、
それは政府としても同様で、
国家を挙げて、堂々と地震予知に取り組めない理由は、そこにもある。

しかしながら、前回の震災であれだけの被害者を出しておきながら、
そして、次の大地震が来る可能性が高いということも分かっていながら、
それぐらいのリスクに尻込みしている場合では、最早ないと思う。

これは原発問題同様、あの震災以来、
科学に突き付けられた大きな課題のひとつである。

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