ナショジオの写真に、セリフを入れてみた。
さて、まず驚くべきことは、
ジャガーがワニを襲って食す、ということである。
「あら、うちのネコちゃんだって、よくヤモリなどを弄んで食べますことよ、オホホ・・」
というのとは、わけが違う。
自分の体長よりも大きな肉食動物を、単独で狩ってしとめるというのは、
野生の世界、恐るべし、としか言いようがない。
つい6500万年前までは、爬虫類が狩る側であり、哺乳類が狩られる側であった。
恐竜たちが闊歩する昼間は、哺乳類にとっては魔の時間であり、
したがって、活動の場を夜間に絞らざるを得ず、
哺乳類が聴覚や嗅覚を発達させたのは、行動が夜間に限られていたからだ、というのが最早定説である。
中生代末のカタストロフィを経て、新生代へ移る。
新生代とは、かつてない混乱の時代である。
哺乳類・鳥類・爬虫類がサバイバルゲームを行い、
挙句の果てには、ヒトのような、厄介者までも登場してしまう。
ヒトは哺乳類であるにもかかわらず、
爬虫類は喰わない、同族である哺乳類を食すことを至上としている、残酷な存在である。
もちろん、鳥も喰う。
古生代や中生代には、喰う・喰われるのルールのようなものがあった。
それが新生代にはなくなった。
「Might is right」。力こそが正義である。
だから僕は、この写真を見て、非常に複雑な気持ちになる。
その複雑さというのは、生物の力関係についての神秘、といってしまえば恰好よく聞こえるが、
生態系におけるエントロピーの増大とでもいおうか、
なぜかただならぬ不安のような感覚になる。
いまエントロピーという言葉を使ったが、
地球という系を考えた場合、あらゆる視点におけるエントロピーが急激に増大していることが、
とても気になっている。
それはヒトのせいなのか?
いや、ヒトがいなくてもそうなっていたのか?
そもそも、ヒトの誕生自体が、エントロピー増大の引き金だったのか?
そしてまた、科学は哲学の領域へと突入する。
地球、そして宇宙の歴史というのは、かくも謎だらけである。