我々の太陽系の惑星には、名前が付いているものだけでも、100個以上の衛星がある。
その中で、ある程度の大きさを持つものについて、主なデータをまとめてみる。
母惑星 | 半径(km) | 軌道長半径 | 自転周期(日) | 公転周期(日) | |
月 | 地球 | 1,738 | 38.4 | 27.3 | 27.3 |
イオ | 木星 | 1,815 | 42.2 | 1.77 | 1.77 |
エウロパ | 木星 | 1,569 | 67.1 | 3.55 | 3.55 |
ガニメデ | 木星 | 2,631 | 107 | 7.15 | 7.15 |
カリスト | 木星 | 2,400 | 188 | 16.7 | 16.7 |
レア | 土星 | 764 | 52.7 | 4.52 | 4.52 |
タイタン | 土星 | 2,575 | 122 | 15.9 | 15.9 |
タイタニア | 天王星 | 790 | 43.6 | 8.71 | 8.71 |
オベロン | 天王星 | 760 | 58.3 | 13.4 | 13.4 |
トリトン | 海王星 | 1,350 | 35.5 | 5.88 | 5.88 |
※半径が750km以上のものを選出。
※軌道長半径の単位は、10の4乗km。
さぁ、材料は出揃った。
あとは、何か気付くことはないか、この表をじっと見てみよう。
じっ
じっ
・・・・・・・
まず最初に気付くのは、自転周期と公転周期が同じだということ。
これは、潮汐力などの影響で、自転と公転の周期が共鳴するために生じる現象。
月が地球に決して裏側を見せない、というのはこのためである。
そのことは不思議でもなんでもないのだが、
どう考えても不思議なことが、2つほどある。
1.月の大きさについて
2.月の公転周期の長さについて
「1」の月の大きさについては、いや大きいには違いないが、
イオやガニメデやカリストやタイタンの方が大きいではないか、
と思われるかもしれない。
それはその通りなのだが、絶対的な大きさではなく、
母惑星との半径比をとってみると、
月:1/4、イオ:1/40、ガニメデ:1/27、カリスト:1/30、タイタン:1/25
となる。
母惑星に対する大きさでは、月がダントツなのがこれでわかる。
「2」の月の公転周期の長さについてだが、
軌道長半径が小さい割には、公転周期が長いのではないだろうか。
太陽の周りを廻る惑星については、
「公転周期の2乗と軌道長半径の3条の比は一定である」
という法則(ケプラーの第3法則)が成り立つので、
それをこれら衛星にも当てはめ、
それぞれの「公転周期の2乗/軌道長半径の3乗」の値をとってみる。
月:0.013
イオ:0.00004
エウロパ:0.00004
ガニメデ:0.00004
ガリスト:0.00004
レア:0.0001
タイタン:0.0001
タイタニア:0.0009
オベロン:0.0009
トリトン:0.0007
母惑星が同じ衛星群にはケプラーの第3法則が適用され、
すべて同じ値になっていることが分かる。
しかし母惑星が変われば、この値も当然変わるわけだが、
もう少し見やすい比に変えてみよう。
月:1,300 木星系:4 土星系:10 天王星系:90 海王星系:70
このままでも月の数値がズバ抜けて大きいことは分かるが、
それでも疑い深い人のために、さらに対数をとってみる。
月:3.1139 木星系:0.6021 土星系:1 天王星系:1.9542 海王星系:1.8451
これで、月の公転周期が異常に長いことが、お分かりいただけたかと思う。
1にせよ2にせよ、この「謎」は、
月がどのようにしてできたかに、深く関わっている。
実はここに挙げた2つ以外にも、
月には理解不可能な謎がいくつかあるのだが、
それを解く鍵となる、月がどのようにしてできたかについては、
いまだに確たる学説がない。
ただひとつだけ確実にいえるのは、
月は、その他の衛星とは全く異なる方法で誕生した、ということだ。
もし仮に、月が10日で公転をしていたならば、
いわゆる「1か月」は約10日となり、
我々の文明は全く異なる様相を呈していたであろう。
いやそもそも、そんなに高速に公転する月が近くにあったのでは、
地球の環境自体が大きく異なっている可能性が高い。
まさに月は、異常な性質ながらも絶妙なバランスで存在しているのであり、
このような月の存在こそが、知的生命体存在の条件なのだとしたら、
宇宙人探しにとっては、非常に高いハードルになるに違いない。
月のすべての「謎」をクリアできる学説は、今後出てくるであろうか。
中には、「あれは人工物だ」と主張する人たちもいるのだが・・・。