先日報道された、ネパールのルンビニで発見された世界最古の仏教寺院。
これによって、論争が絶えない釈迦の生誕時期が、
有力説よりも100年ほど遡ることになるかもしれないのだから、それなりの重要性はある。
ただし、問題は2つ。
1つめは、年代測定の方法について。
今回は、放射性炭素法と光ルミネッセンス法が用いられたというが、
測定方法には、それぞれ得意な(精度の高い)年代というものがあり、
結果をそのまま鵜呑みにはできない。
また、結果は当然ながらピンポイントではなく範囲をもって提示されるため、
今回のように、100年前後レベルの論争に耐えうる結果だったのかどうかは、
詳細を見るまではよく分からないというのが本音だ。
2つめは、古代宗教のあり方について。
宗教というのは、ゼロから突然生まれるものではなく、
何らかの別の宗教をベースとし、あるいは要素を取り込むことで成立するものである。
キリスト教には古代ペルシアあたりの宗教の影響が色濃く見られるし、
仏教がヒンズー教の神々を取り込んだことは、よく知られている。
なので、今回発見された遺跡を、「仏教寺院」と即断するのは危険かもしれない。
仏教が勢力拡大の過程で取り込んでいった、古代宗教の遺跡である可能性も否定できない。
以上の2つの理由から、
この遺跡の発見により、釈迦の生誕年が100年早まった、とは結論できないと個人的には考える。