細菌、ではなく、最近、この「ボルバキア」というバクテリアの存在を知った。
昆虫やクモなどの節足動物には、わりと普通に寄生しているらしい。

さて、生物の特徴とは何か、と問われれば、真っ先に思い浮かぶのは、

・エネルギー代謝を行う
・自己複製を行う

の2点である。

自己複製とは、分かりやすく言えば、分身すなわち子孫を残すということだが、
寄生生物にとってみれば、宿主を殺さないというのは勿論のこと、
宿主の子供に、「自動的に」自分たちの子供を寄生させておければ、それが一番効率がよい。

とすれば、一番手っ取り早いのは、宿主の精子か卵巣に寄生し、繁殖することである。
そうすれば、宿主の子供も、生まれたときから「感染状態」になる。

しかしながら、精子の細胞には寄生の余地がないため、
ボルバキアにとっては、昆虫のメスの卵巣に寄生するのがベスト。

けれども、卵巣に寄生し、宿主の子供に自分たちの子孫を寄生させたとしても、
その(宿主の)子供が、必ずしもメスだとは限らない。

それでは、オスだった場合、どうするのか。
ここからがボルバキアの恐ろしいところだ。

ボルバキアに寄生されたオスが辿る運命のその1は、殺されてしまうこと。
役に立たないオスは殺してしまい、メスのエサにすることで、
間接的に自分たちの繁殖率を高めることになる。

運命その2が、恐ろしい。
なんと、ボルバキアは、宿主であるオスを、強制的にメスへと性転換させるのだ。

しかしそのような荒療治は、100パーセント成功するわけではなく、
中にはオスとメスの奇妙な中間状態になってしまう宿主もいるらしい。

一方、ボルバキアに寄生されたメス(あるいは、メスにさせられたオス)は、
オスを受け付けず、単為生殖するようにコントロールされる。

非感染のオスと交尾することで、自分たちの計画に狂いが生じることを避けるための策略だ。

寄生という行為は、共生につながる場合もあるのだが、
このように、寄生する側の一方的で残酷な都合に終始するケースが、多い。

これは余談だが、この寄生というぞっとする概念を映画に持ち込んだ「エイリアン」という作品は、
やはり傑作と言わざるを得ない。