そもそも学術論文ではなく、新書にすぎないので、
内容に関してあれこれ言っても仕方ないのだけれど、
それでも、この本はヒドすぎる!!
まずはタイトルに偽りアリ。
本書内で、従来の地名起源を明確に否定しているケースは、
数えるほどしかなく、
それをもって「間違いだらけ」とは言いすぎだろう。
まぁ、タイトルと中身とにギャップが生じるのは、
珍しいことではないので、ここはよしとしよう。
僕が一番気に入らないのは、
著者の地名起源主張の9割以上は、
「地形」にその根拠を求めていること。
地形図を見るとこうなっているので、
その地形を表すこの言葉が、音変化して、いまの地名になった、
という主張の繰り返しであるわけだが、
果たして昔の人が、地形図を見なければ分からないようなものを、
自分たちの住む場所の名前として採用するだろうか。
地名というのは、もっと生々しい、
生活に根差したところから生まれるのではないか。
さらに、音変化部分の説明が、根拠薄弱。
音が似てるから語源が一緒なのでは、という推測は、
一番やってはいけない、安直なミス。
著者は、「A」という説を否定して、「B」だと主張しているのだが、
「A」が正しくないという説明にのみ力点が置かれていて、
肝心の、「B」が正しいという部分の根拠が弱い。
しかも断定的、かつ感情的で上から目線な書き方が目立ち、
読んでる方が、だんだんイライラしてくる。
「こんな地名しか付けられない東京人のセンスを疑う」
というようなフレーズがあったが、
それならば、東京の地名だけが、
他よりもデタラメ度が高いという根拠はあるのか。
地名の採り上げ方が恣意的で、
明らかに、自説でスムーズに説明できそうな地名だけを採り上げているのも気になる。
「田端」を説明したなら、「田町」も説明するとか、
「蒲田」のついでに「羽田」にも触れるとか、
同語形の地名も、自説できちんと説明できることを示さなければ、
たとえ結果的に正しくても、
都合が良すぎると批判されるのは仕方ないであろう。