科学において、「無」はどのように現れ、
どのように扱われてきたのか、
についての、論説集である。
具体的には、
真空、絶対零度、プラセボ、ノセボ、ゼロ、宇宙の始まりと終わり、
といった内容だ。
ひとつひとつの内容は、科学エッセイとして面白いのだが、
無理に「無」というテーマで括ったのは、
少々強引に感じられなくもない。
ひとことで「無」といっても、
数学者が扱うゼロと、素粒子学者の扱う真空とは、
実体としても概念としても、まったくの別物である。
ただ「無」といっても、
「完全になにもない」というわけではないことは、共通しているわけで、
それをあらためて実感できただけでも、本書を読んだ価値はあった。