中沢新一と、各ジャンルを代表する著名人たちとの対談集。
中沢新一は、20代の頃よく読んだ。
間違いなく、日本を代表する知識人だと思うし、
彼の独特の感性は素晴らしいと今でも確信している。
ただひとつだけ、例のオウム真理教との関わりについては、
きちんと説明をすべきではないだろうか(彼に限ったことではなく、当時オウム寄りの発言をしていたすべての著名人も)。
僕自身、オウムの教義については全く無知なわけだけど、
宗教学者でありチベットで修業を行った宗教人としての中沢新一が、
オウムのどこかしらに共感したこと自体は結構なのだが、
当時、彼らの犯罪までをも正当化する(かのように思われる)発言をしていたことについては、
やはり弁明すべきだと思う。
そうしないと、彼がいま進めている反原発の運動にしたってシラけてしまうし、
何よりも、これほどの知識人が、あの事件が原因で、
世間から特別視されてしまうことが、非常に勿体ない。
オウムの件はともあれ、この本自体について語るならば、
高度な知的ゲームというか、
やはり構造主義というものを前提にしているせいか、
何もそこまで深読みしなくても、、、と思える部分がないわけではないが、
ポジティブに捉えれば、「そういう見方もあるよね」というネタが満載で、
縄文時代から江戸の怪談、YMOの音楽まで、「中沢節」を味わうにはもってこいの一冊だ。
ただ敢えていえば、中沢新一という人は、
不思議と思わぬところで狭い考え方をすることがあって、
そのあたりがこの本でも対談している吉本隆明あたりとは、一線を画すのかもしれない。
対談集なので、相手もさらっと流してしまっている部分もあるけれど、
じっくり読むとおやっ、というような、なんというか彼がまだ悩んでいるというか、
ある意味生々しい記録ではあるのだけれども。
久々に、読み返してみるかな。